えり |
グリーンズに参加したのは2009年ですね。
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甲斐さん |
そうですね。前職でグリーンズと仕事をしたときに
こういう仕事をしてみたいなと思って、
当時の編集長だった鈴木菜央さんに
「記事を書かせてください」と言ったんです。
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えり |
もともと環境や社会問題に関心があったんですか?
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甲斐さん |
洞爺湖サミットが行われた2008年に、
環境問題にかかわる仕事に携わって個人的にも色々勉強するうちに、
将来に漠然と不安を感じたんです。
自分が食べる物さえ自分で作れないことに
危機感を持つようになりました。
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えり |
グリーンズに興味を持ったのはどうしてですか?
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甲斐さん |
例えば温暖化で北極の氷が溶けて…という話は頭では理解ができても、
自分の日常からは少し遠いじゃないですか。
でもグリーンズではちょっとした気づきから始まることや
身近な生活でおこなわれていることが伝えられていて、
とても新しいと感じました。
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えり |
同感です。
実際に退職を決めたのはどんなきっかけがあったんですか?
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甲斐さん |
若い頃は会社に価値観を合わせて働いていても楽しかったのですが、
だんだんと自分の中に、それとは違う軸ができはじめたんです。
明確に見えていたわけではないですが、
それを探しはじめないとどこへも行けない気がして。
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えり |
軸ですか。
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甲斐さん |
はい。何を大事にして生きていくか、というか、
残りの人生これをやっていく!というものを見つけたいと思いました。
形が変わっても長く続けられるテーマのようなものです。
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えり |
グリーンズでは”地域”に関する記事を
たくさん書いていただいていますよね。
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甲斐さん |
私は自分の中に専門性があるわけではなかったので、
自分が語れることはないけれど、何かやっている人の言葉を
代わりに伝えることならできるかなと感じていました。
ウェブで長い記事は読まれないと言われていたし、
ひとりよがりの記事になって失敗したことも多々ありますが、
2010年の「地元学」のインタビューで
この方向でもっと書いてみたい、と思うようになりましたね。
当時のグリーンズは海外のネタが中心で
土着な記事は少なかったので、
自分がそういうものを読んでみたかった、ということもあります。
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えり |
どんな記事が印象に残っていますか?
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甲斐さん |
どれも刺激的で面白かったですね。
お話を伺っているとすごいなぁと思ったり
共感することがほとんどですが、
西粟倉の牧さんのお話にはすごく引き込まれました。
「木工房ようび」の人たちの仕事に対するまっすぐな姿勢も
強烈に心に残っています。
「ザ・漁師’s」ではグリーンズの記事で周囲に活動内容を
理解してもらえたと言ってもらったり、
「青森ゴボウ茶」は記事がきっかけで百貨店の取り扱いが
決まったと連絡が入ったりして、とても嬉しかったです。
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えり |
これからやってみたいことはありますか?
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甲斐さん |
今は各地方の人たちが自らどんどん発信するようになってきているので、
そういう地域メディアや、地域からの発信といったテーマを
追いかけてみたいなとは思っています。
なかなか時間が取れないのですが…。
また、自分自身もこの4月から「世田谷くみん手帖」の編集に関わっていて、
「地方VS東京」っていう単純なものではないと思うようになりました。
いま多くの人が地域に目がいっているのは、
本当の意味で心が休まる場所や、
地に足がついたものを求めているからだと思うのですが、
東京にもそういう所は沢山あると気づきました。
長く愛されてきたお店もあれば、
商店街にはお惣菜屋や魚屋があって人と人の庶民的な交流が盛んです。
都会か地方かという二極化ではなく、
いかにその町を自分の町にできるか、が大事で。
もっと東京という町もミクロな目で見ていきたいですね。
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えり |
今日はありがとうございました!
最後に、甲斐さんにとってグリーンズとは?
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甲斐さん |
たくさんの人たちと会えるきっかけをくれている場。
取材した人とつながり、またそこで新たな出会いがあり、
取材先の人もグリーンズで紹介したことで新しいつながりが生まれて
どんどん広がっていく。
そんな起点をつくってくれる場所だと思っています。
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