宮本 |
最初に、グリーンズにかかわったきっかけを教えてください。
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丸原さん |
5年くらい前に、フェアトレードとかオーガニックのチョコを日本に
広める「チョコレボ」っていうキャンペーンがあって、
そのミーティングのときにYOSHと出会ったの。
そのとき僕はブログで世界の環境広告を紹介していたんだけど、
「それをグリーンズでもやりませんか」って
YOSHが声をかけてくれたのが最初ですね。
そのあとブログはあんまり更新しなくなったんだけど、
グリーンズの方では環境に関わらず、社会貢献とか、
ソーシャルグッドな広告を紹介するってことを続けています。
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宮本 |
“ソーシャル"なテーマに
興味を持ちはじめたきっかけは?
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丸原さん |
転換点は9.11ですね。
家に帰ってきたときにテレビでビルが真っ二つに割れてるのを見て、
「何が起こってるんだろう」と思っていろいろ調べていくと、
資源をめぐる争いとか、政治的ないさかいがあるのがわかって。
でも、当時はそういうテーマが今ほど身近なものではなかったので、
難しいものをみんなが楽しめるコンテンツとして伝えるために、
ブログをはじめましたんです。
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宮本 |
そのあたりから、広告が社会的なテーマと
近づいていったんですね。
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丸原さん |
関係のない人に対して、ある特定の商品とか
サービスとかの情報を伝えていくのが広告の役割ですよね。
例えばテレビの番組とか映画だったら、これ見ようと思って見るけど、
広告はそういう態度ではない人たちに
メッセージを届けなくちゃいけない。
しかも短い時間で。
それとまだみんなが問題意識として持っていない
社会的なイシューを関心事にしていくっていうのは
同じスキルだと思うんです。
特定の人だけが持っている情報をみんなに興味を持ってもらうことが
広告の役割なのかなぁ。
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宮本 |
どういうときにコピーの言葉が思いつくんですか?
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丸原さん |
まずはひたすら資料を漁ったり、人の話を聞いたりして、
悩んでいるうちに、ふといろんなものが
頭のなかで発酵するんです。
そんななかですっと降りてくるか、
もう締め切り間近にぐーっと地面から湧いてくるか、
その2パターンですね。
いずれにせよ、頭で考えるプロセスと
思いつくっていうところの間には
だいぶ時間があります。
>
> だから考えるだけでもダメで、
空にあるものを掴むというか、
受信するみたいなところがあるんですよ。
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宮本 |
宇宙からのテレパシーみたいですね!(笑)
グリーンズではこれまでたくさんの記事を書いていますが、
その中で印象に残っている記事はありますか?
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丸原さん |
病気で苦しんでいる子どもを助ける
NPOのダイレクトメールの記事ですね。
それまでグリーンズの記事を書く基準は
いかにインパクトがあるか、ということで選んでたの。
でもこの記事は、送り手のやさしい気持ちが
受け手をやさしい気持ちにさせて
行動につなげるっていう広告なんです。
これがけっこうウケたから、
「あぁグリーンズの読者っていうのは
やさしい人が多いんだな」って思って、
記事の方向性を意識して変えるようにしました。
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宮本 |
そうだったんですね。
今はカンヌ国際広告フェスティバルの受賞作品を
紹介する連載をしていますが、
こちらも同じような基準で選んでいるのですか?
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丸原さん |
カンヌでは予算をかけて作られたドカンって派手な広告が多くて
そりゃ当然おもしろいしインパクトはあるんだけど、
グリーンズでやるからには読んだ人が
こういう考えがあるんだったら自分もこうしてみようとか、
自分で応用できるような事例を紹介していこうと思っています。
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宮本 |
次の行動につなげる、ということですね。
僕は個人的に、丸原さんはグリーンズの
お父さん的存在だなぁと勝手に思っているのですが(笑)、
長くグリーンズに関わっている丸原さんから見て、
グリーンズに足りないところはどこだと思いますか?
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丸原さん |
お父さんというよりはいとこみたいな感じかな。
長いこと付き合っているし、
いろんなものが見えるんだけど、
中身まではきっと理解してないから。
そういう目で見ていると、
「未来をつくろう」っていうベクトルは
とても素晴らしいと思う。
でも、未来に向かう前提となる今が
とても危機的な状況になってるから、
「未来をつくる」っていう視点は持ちつつ、
いま起きている気候変動とか政治の問題に対して、
しっかりとした主張・オピニオンを持って
それを発信していけるような感じに
なればいいなぁと思っています。
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宮本 |
未来だけじゃなくて、
いま目の前の問題にもしっかり焦点を当てると。
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丸原さん |
うん。とくに主義主張がなくやるっていうのは
グリーンズの今までのスタンスだったかもしれない。
とはいえ今目の前で起きている問題もたくさんあるから、
「それをなんとかしようと思ってる」っていうメッセージを
出していくっていうのも大事なんじゃないかな。
ちょっとね、ソーシャルっていうことで、
楽しくハッピーにっていうのは、
震災前だったらおもしろいな、
共感できるなっていうことで
無条件にOKだったんだけど、
やっぱり3.11が起こってからそれだけでやってると
「ちょっと大丈夫?」という感じにも見えなくもない。
あのときから世界が変わってしまったから。
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宮本 |
丸原さん個人にとっても
3.11は大きな衝撃だったんですね。
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丸原さん |
世界は終わるんだっていうことがはっきりわかった。
もう破滅というものがあり得るんだっていうことを考えて、
今どう行動するかを考えなくちゃいけない。
生き抜く力というか、そういうものが
大事になっていくんだなと思います。
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宮本 |
最後に、丸原さんにとってグリーンズとは何ですか?
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丸原さん |
今は「いいね!」っていうのが軽くなってるけど、
その「いいね」に向けて、自分で考えて自分で行動しようとする。
グリーンズはそういう価値観を持ったコミュニティだと思います。
グリーンズ界隈の人は言いっぱなしじゃなくて、
何かやりたいっていう気持ちを持った人たちばっかりだから。
こういう人が今は本当に一部だけなんだけど、
これがもっと大きくなっていけばいいなって。
そう信じてずっと記事を書いているんだけどね。
グリーンズに僕がコピーをつけるとしたら、
「行動するYes!」かな。
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宮本 |
これからも丸原さんの記事を楽しみにしています!
ありがとうございました!
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