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2015.03.22 Vol.28 New Moon / for 389 greenz people
昨日は春分、めっきり春めいてきましたね◎
今回も greenz people のみなさまに、「グリーンズのつくり方」をお届けします。
 
<vol.28>の目次

FEATURE / Make: Japanに聞く、世界と日本でのムーブメントの育て方
SCENES / 札幌、福岡、編集学校@関西...近ごろのグリーンズ
COMMUNITY / ジュニアライターのふたりに聞く「クイック記事の秘訣」
Q&A / 編集長YOSHさんに質問「最近、知の興奮を感じた本って?」
 
 

FEATURE

日本でのMakerムーブメントを牽引するMake: Japanに聞く
世界と日本でのムーブメントの育て方

with Hideo Tamura & Tetsuo Kanai / interview by Nao


こんにちは、編集長の鈴木菜央です。

グリーンズはウェブマガジンであると同時に、コミュニティでもありたいなという思いで、読者、ライター、取材対象者などが集まれる場づくりとして、「green drinks Tokyo」を2007年から続けています。

また、最近力をいれているのが「グリーンズの学校」です。ソーシャルデザインをカタチにしていきたい人たちのサポートをしつつ、新しい暮らし方、働き方を一緒に考え、つくっていくことを目指しています。

さらに、私たちが創刊してからこれまでの中で学んだことをまとめて、ムーブメントの可視化をしたり、生き方、社会との関わり方の提案をしようということで、「green Books」や『ソーシャルデザイン』、『「ほしい未来」は、自分の手でつくる』などを出版したりしています。

そんなわけで、グリーンズは、メディアであり、コミュニティであり、それがムーブメントに育っていってくカタチづくりにずっと取り組んできました。

で、実はそういうことの先行事例として、「Makerムーブメント」に非常に注目してきました。その起点は2005年、「Maker」「Maker Movement」というコンセプトを打ち出した雑誌「Make:」です。

その後、2006年に行われたMakerの祭典、「Maker Faire ベイエリア」(サンフランシスコ)を皮切りに、9年間で全世界に拡大、2014年には最大のMaker Faireで21万5000人、全世界で76万人が参加するまでに成長しました。急成長する生態系の中で、個人や小集団の起業も多数、生まれつつあります。

2014年にはこのムーブメントの盛り上がりをうけて、Maker Faireに参加したオバマ大統領が国立の研究機関を民間に開放することを宣言するまでに広がってきています。

いったい、どうやってそんなムーブメントに育っていったのか? その秘密は? 世界では、日本ではどうなのか?

日本でも盛り上がりつつあるMakerムーブメントの中心的存在としてMakezine.jpを運営し、Maker Faire Tokyoを毎年開催しているオライリー・ジャパンの田村英男さん、Makerムーブメントに関する書籍を多数翻訳して紹介している翻訳者・金井哲夫さんにお話を伺いました!(菜央)


 

(左)田村英男さん (右)金井哲夫さん
 
菜央 こんにちは! 今日はよろしくお願いいたします。
 
おふたり よろしくお願いします。
 
菜央 アメリカで、オライリー・メディアから
雑誌『Make Magazine』が創刊されたのが、
2005年ですよね。

さっそくなのですが、その後、すごい勢いで
Makerムーブメントが盛り上がったのは
どうしてだったんでしょうか?
 
田村さん 当時オライリーの副社長だったデール・ダハティが、
「ハッカーが活躍する領域が、ソフトウェアだけではなくて
 ハードウェアまで広がった」と見切った瞬間が
2005年だったんです。

iPodやPSPが出てきて、いろいろと改造できるようになり、
今までソフトウェアだけで遊んでいたハッカーが、
ハードウェアでも遊べるようになって。
 
菜央 はい。
 
田村さん あとは、"オープンソースハードウェア"という、
既存のものを改造するだけではなくて、
アーティストや学生、エンジニアが使えるような
ツール(Raspberry PiやArduinoなど)が
安くなったのもあります。

自分のプログラミング技術で変なものを
どんどん作れるようになると、
昔、電子工作をやっていた人だけではなくて、
自分たちのムーブメントだと感じてくれる
若い人たちが増えていった。

それがアメリカでは2005年くらいで、
日本だと2008年くらいからわっと盛り上がってきました。
だんだん参加者の年齢が若くなってきて、
お子さんを連れてくるようになって、
という風に発展してきた感じです。
 
菜央 ふむふむ。
 
田村さん ここでひとつ、金井さんにお聞きしたいのですが、
かつてパソコンがすごく混沌としていて、
使い方がまだ定まっていなかったり、
どんどん若者が参加していった時代と、
今のMakerムーブメントって
共通してる部分ってありますか?
 
金井 70年代にApple Ⅱが出て、
プログラミングが流行りましたよね。

普通の学生が自分でゲームをつくって、
近くのパソコン屋にフロッピーディスクを持ち込んで
「これ売って!」と言っていた。
それと同じことが、いま始まっていると思います。

プログラムというのは、IBMやMicrosoftが
つくっているものと同じものが個人でもつくれる
プラットフォームなんです。
 
菜央 僕もBasicプログラムからはじめたので、
これでなんでもできる!って、とてもワクワクしました。
 
金井さん Raspberry Piみたいなものを使えば、
その辺で普通に売ってるITガジェットと
同じクオリティーのものが素人でもつくれる。

そこで、「あ、できるんだ!」っていうのと、
「やってもいいんだ!」という雰囲気が
広がったんだと思います。

趣味でつくっていたものをネットで発表すると、
みんなが「欲しい」「売ってくれ」と言ってくれる。
これは商売になるなというところから、
火がついていったんじゃないかな。
 
田村さん 2008年ごろからツイッターが広がりましたが、
来場者がそういう作品を見て、「すごく面白い」って
ツイッターに書きますよね?

最初は見に来たのが、次は参加者になって、
そこで知り合って、一緒にものを作っていく。
そんないい流れが続いてきた感じがします。
 
菜央 受け取り手がすぐに参加者になれる敷居の低さは、
70〜80年代のコンピューターブームと、
Makerムーブメントの間で、確かに共通点としてありますよね。
 
金井さん あとはやっぱり、アメリカの文化っていうのが
大きいんじゃないかな?
自分で家を建てて、自分で車を直して……
基本的に自分でものを作る社会じゃないですか?
アパートもまず自分で直さないと
住めるようにならないでしょ(笑)

DIYの精神が一般の人たちの血に染み込んでいるところに
大量生産の文化が始まって、日本と同じように
ものは買うものだという意識がついたんですよね。
それでもやっぱり自分で作りたいものは自分で作ってた。
変人扱いされながらも。

そこへきて、ハードウェアの解像度が上がって、
びっくりするようなものを作れるようになると、
「あ、作ってもいいんだ!」という風に、
もともと持っていたDIYの血に火がついたと思うんですよ。

"メイキング"(ものを作る文化)と、
"ティンカリング"(改造する文化)が、
混ざりながら、同時に進んでいる。
 
菜央 70年代からのソフトウェアでの革命が、
モノに広がってきた、と。
 
田村さん ソフトウェアの世界って、自分の仕事の入出力は、
画面の中でしか見えないわけですよ。
画面から出てこないのは、やっぱりつまらなくなる。
やっぱり形になるものを作ってみたい。

ドリルとかを使ってみたりすると、
明らかに感覚が違う。
テンションが上がりますよね。
 
金井さん プログラミングが、今までパソコンに
閉じ込められていた方が不自然なのであって。
元々は現実世界にあるものを
動かすためのツールなんですよ。

今もMaker Faireで中心的にやってくれている学生たちも、
どんどん物を動かすことに熱狂してやっていますね。

技術系の大学生が多いんですけど、
アート系の大学生もどんどんエレクトロニクスを
作品に取り入れていて、テクノロジーとアートが
重なっているのがすごく面白い。
 
菜央 ちなみに、アメリカと日本では、前提条件は違いますが、
起きている変化は結構共通しているんですか?
 
金井さん アメリカの少し後を追っている感じですね。
アメリカだとオバマ大統領も
スタートアップを後押しする政策をしていて、
その点ではアメリカは恵まれていますね。

ただやる側の気持ちとしては、
日本もアメリカも同じくらい熱いと思います。
 
菜央 Maker Faire Tokyoも、相当盛り上がっているみたいですね。
 
田村さん おかげさまで、去年のMaker Faire Tokyoは
東京ビッグサイトでやることができました。
出展者で300人、お客さんで13,000人の方に来ていただいて。
 
金井さん すごいですね!
 
田村さん ただ、この出展者数だと、来場した方が
1日で見られる限界を超えてるんですよね。
コミケとかだと自分の好きなジャンルがあって、
そこだけを見にいくんですけど、Makeの場合は、
たぶん、全部の展示を見たい。

そう考えると、東京で大きくやるのは難しくて、
東京にだけみんなが集まるというよりは、
それぞれの街に集まった方がいいのかなと。

あまりコミケみたいに大きくしていくのは現実的ではないし、
お客さんにも「一部しか見れなかった」という印象が
残ると思ったんです。なので、地方での開催は、
今後ちゃんとやらなきゃと思っています。
 
菜央 なるほど。
 
田村さん あとはgreen drinksのように、テーマを絞って、
毎月開催するのも意味があるんじゃないかな? とか。

特に今はいろんなところに、ファブラボができてきて、
最近よくお会いするのですが、それぞれ課題もあるようでした。

だからこそ、何か日本のMakeとして
お手伝いできるところがあればしたいし、
逆に信頼できる人と一緒に、地域でイベントを
開催するのもアリかなと思っています。
 
 

Maker Faire Tokyo の様子
 
菜央 オライリー・メディアがすごいなと思うのは、
WEB2.0やオープンソースの考え方を提唱するなど、
思想的なリーダーになっていることなんです。
 
田村さん Makerムーブメントでいうと、
最初のころの参加者は、オライリーの読者だった
オープンソースのエンジニアの方が多かったんです。

自分が作ったものの情報をブログで公開してくれたので、
次の人はそれを参考にして作れたりする。
そこで、これまでの世界とは違う情報の循環が起こり、
そういう空気がつくられていきました。

それまでのメディアアートの展覧会やものづくりのイベントは、
美術系の作品があってもあまり説明がなくて、
逆にどんな技術で動いているのかを聞くのは下品みたいに
思われていたようですね。

でも、Maker Faireの場合はメディアアートの作品でも、
裏返してみてもいいし、
「これってどうやって作ってるんですか?」って聞ける。
 
菜央 メディアがムーブメントの空気をつくっているんですね。
今どのくらいの人がMakerムーブメントに
関わっていると言えると思いますか?
 
田村さん どこからどこまでをカウントするかにもよりますね。
 
金井さん ものを作るのが楽しいからという理由で
自分はMakerだと名乗る人と、
「Makerムーブメントを通じて社会を変えるんだ」
というところまで意識を持っている人とでは、
まだギャップがありそうですよね。
 
田村さん 「社会を変える」とか「世の中をよくする」というのは、
日本のMakeとしては、それほど言ってはこなかったんです、
アメリカの方だと背景にはそういう意識があるので、
なんらかの形でそれを伝えたいとは思っています。

なので、金井さんに翻訳していただいた
『Made by Hand ―ポンコツDIYで自分を取り戻す』や
『子どもが体験するべき50の危険なこと』などを通して
そういった文化を翻訳していただいたら、
そこはちゃんと反響があって。

そういった方にもMaker Faireに来ていただいているので、
金井さんにお手伝いいただいてありがたかったですね。
 
菜央 僕も金井さんが翻訳した本を読んで、
Makerムーブメントの意味を知りました。

特に『Made by Hand』は、
「Makerとしての生き方」はすごく豊かだよ、
という話でとても面白かったです。
 
田村さん この本が面白いのは、電子工作だけでなく
例えば発酵食品とか、スプーンを作ったりとか、
そういうところもDIYなんだよ、と。

日本のMakerだとそういう分野には
まだ広がっていないですけど、
分野を広げたいって気持ちはずっとありますね。
 
金井 日本だと”ものづくり”っていうじゃないですか?
この言葉が僕はすごく嫌なんです。
”ものづくり”っていうと、職人さんの冴えた技術に
対して使っているように感じるんですよ。

”Making”っていうと、
個人が作りたいものを作るっていう言葉で、
『Made by Hand』の著者が作ったものって雑なんです。
もっとここはきちんと穴を開けようよ、とか
日本人だと思っちゃうんですけど(笑)
とにかくまず作る。それが素晴らしいなと。

日本のみなさんにも、”メイキング”って
そっちの意味なんだよってことをわかってもらいたい。
思いついたことをすぐ作ってみる。
めちゃくちゃでもいいから。
だんだんよくしていけばいいから。

最初からいいものを作ろうとすると、
ちょっと無理だと思っちゃうのが普通の人の意識。
 
菜央 ウェブの世界でもよく言われる、
小さく産んで、大きく育てる、とか、
常にベータ、とかそういう考え方と同じですね。
 
田村さん クリス・アンダーソンさんが
『MAKERS』で書いたウェブの考え方が、
ハードウェアだとか、バイオテクノロジーの領域にまで
広がっていったのは、本当にその通りだなと思いますね。

”ものづくり”という訳語は未だに
いろいろ議論があるんです。
メイクって言葉の訳をどうするか?
 
金井さん 日本語にできないんですよ。
メイキングとティンカリングは。
日本語に相当する言葉がないので。
 
田村さん ただハッキングとかも、
そういう用語として定着しているので、
言葉を大事に使って行くことで長い間に
本来の意味が伝わればいいなと。
 
金井さん あえて僕はハッキングは
そのまま訳さずに使っていますね。
ハッカーって本来はいい言葉なんだよって(笑)
 
 

2011年6月発売の『Made by Hand』
 
菜央 アジアでのMakerムーブメントの広がりはどうでしょうか?
アジアならでは貢献も、あるのではないかと思いますが。
 
田村さん そこは徐々に、ですね。
Maker Faire自体はまずはアメリカで大きくなって、
日本やアジアに徐々に浸透してきて、
今はパリや、ロンドン、中国の深センとかでも
すごく大きなイベントになってきています。

そんな中で、日本のみんながもってる技術、
面白さは結構高いレベルにあると思いますね。
そんなMakerたちを海外に紹介するのは、
やっていきたいことです。
 
菜央 すごくいいですね。
 
田村さん たぶん日本のMakeに期待されているのって、
そこなんですよね。

去年はMakeのファウンダーのデール・ダハティも
東京に見に来て。来る前はどう思うか
心配だったんですけど、すごく楽しんでくれた。

Maker Faireの作品を見て、
”盆栽エレクトロニクス”と言っていたんですよ。
机の上で盆栽のように作り込んだということで。
うまいこと言うなと思って。
 
金井さん 小さくまとめるのが得意だから。
 
菜央 面白いなぁ。”盆栽エレクトロニクス”って
流行るかもしれませんね。
 
田村さん あと、中国は経済に勢いがあるので、
すごく盛り上がっているしおもしろいんだけど、
日本だとものづくりの歴史があるので、
その文化の厚みが見えるような
展示が多かったと言ってましたね。
 
菜央 アメリカではこの分野で起業する人が
多いと思いますが、日本ではどうでしょうか?
 
田村さん アメリカのMakeの場合だと
スタートアップとしてどんどん起業しようよっていうのが、
メッセージとしてあると思います。

ただ日本の場合だと起業を取り巻く環境も違いますので、
そこまで焚きつけるのも無責任というか、
日本のMakeとしてはそこはあまり
謳わないようにはしていますね。

ただMaker Faireで部品を売ったり、
作品を売ったりするところで、
自分の技術がお金になるということは、
少しずつ浸透してきているので、
Maker Faire以外でもサポートできるところが
あればしていきたいですね。
 
菜央 ちなみに、パーマカルチャーとMakerムーブメントは
出会ったりしてるんですか?
 
田村さん アメリカだと、農家の方が出展されていますよ。

ただ、日本の場合、初期の頃にメディアアート系の方に
サポートしていただいたり、
出版社としてのビジネスのやりやすさを考えて
エレクトロニクスの方に寄っていったので、
農的なことに興味がある人たちとの関係性を
どう作っていくのかは宿題ではあります。
 
菜央 僕の周りにはなぜか、
ハードウェアハッカーなんだけど
巡り巡って農的な暮らしを始めた人だったり、
畑をやっているウェブエンジニアで
Arduinoを使って遊び始めている人がいます。
 
金井さん クリエイターというか、ものを作っている人って、
料理もするでしょ?
食べることに興味を持つと、
いろいろと自分で作ってみたいという
気持ちになるんですよね。

堆肥を作ってみたり、お味噌をやってみたりとか。
納豆を自分で作れたらいいなぁ。
失敗したら悲惨でしょうけど(笑)
 
菜央 納豆はそんなに難しくないですよ(笑)
適切な温度管理だけです。

なんだかサステナビリティと、こういうムーブメントの合流って
いろいろ可能性がありそうですね。
 
田村さん まだ手が回っていないのですが、
個人的には、多様にしていきたいんですよ。
ジャンルも参加者も。

大きいスポンサーさんに入っていただいて、
ビジネスとしてサポートしてもらえるのは、
安心できるし、ありがたいんですが、
今後はできるだけプレイヤーを多様にしていく中の
一プレイヤーとして歓迎したいと思っています。
 
菜央 なるほど。
 
田村さん あとは、デール・ダハティが日本に来た時も
強調していたんですけど、”教育”は重要です。

Raspberry PiもArduinoももともと、
教育目的で作られたツールなんですよね。
クラウドファンディングはガジェット系が目立ちますが、
教育に関わるツールがもっと出てきたら
面白いのかなと思います。

今年は教育系の本が出る予定なのですが、
本を出版して、それをなんらかの形で
イベントにつなげていくというのが当面の課題ですね。
 
菜央 いいですね。
 
田村さん また、Raspberry PiやArduinoを使った
つくりかたのレシピがどんどん
共有されていったほうがいいような気がします。

「Raspberry Piをつかって納豆をつくる」とか。
その情報があれば敷居がぐっと下がりますよね。
 
菜央 ラズベリーパイと納豆って組み合わせは、不味そうですねぇ(笑)
でも、食は誰にでも関わりが深いので、面白いテーマだと思います。

今日はMakerムーブメントのさまざまなお話が聞けて、
とてもおもしろかったです。
Makerムーブメントにワクワクしている一個人としても、
有意義な時間でした。

日本でこれからムーブメントが広がっていって、
定着していってほしいです。
そのために、なにかコラボレーションができたら嬉しいです。
 
田村さん 逆にグリーンズさんがカバーするエリアの中で面白い人がいたら、
グリーンズさんとしてMaker Faireに
参加していただいたりとかも
おもしろいかもしれませんね。
 
菜央 確かにそうですね!
今日はありがとうございました。
 
 


SCENES

編集学校@関西、gd札幌、ミミズ、糸島...
近ごろのグリーンズの風景

selected by Nao, Yosh, Ono and Shotaro

 

2015年2月27日(金) 大阪にて
もうすぐグリーンズ編集学校@関西はじまります!
教科書があると、やっぱり上がるわ〜(YOSH)
 

2015年3月7日(土) 札幌にて
札幌のゲストハウスwayaさんで初の #gdSapporo がまもなく開催!
キックオフに立ち会うの初めてなのでワクワクする〜!(しょうたろう)
 

2015年3月14日(土) いすみにて
今日も、みみずたちは元気です。何をあげたらいいか、やっと分かって来た。(菜央)
 

2015年3月18日(水) 糸島にて
糸島コワーキング&トライアルステイ Project RIZE UP KEYA。いい感じ◎(おの)
 


COMMUNITY

greenz ジュニアライター宮本裕人さん、松本優真さんに聞く
クイック記事を書くときの秘訣

with Yuma Matsumoto & Yuto Miyamoto / interview by Kota


いい記事を生み出すためには、ライターさん同士がつながる場が大切です。そこで2月から、ライターさんをゲストに迎えて、オンラインでミニトークを行う「モーニングハングアウト」を開催しています。第二回のゲストは宮本裕人さん、松本優真さんです。

ふたりともgreenz.jpのライターインターン出身。現在はジュニアライターとして活動していて、海外の記事をもとに短く紹介する「クイック記事」の名手でもあります。そこで今回は海外記事の情報のまとめ方や、クイック記事を書くときに心がけていることについて伺いました。(コウタ)


 

(左)宮本裕人さん (右)松本優真さん
 
コウタ 今日はよろしくおねがいします!
二人ともgreenz.jpに関わりはじめたのが2013年ですね。
宮本くんは僕とライターインターンで同期でした。
 
宮本さん そうですね。 最近はあまりクイック記事は書けていないのですが、
何か役に立つヒントを話せれば。
 
松本さん 同じく僕もここ数ヶ月は
クイック記事を書いていませんが、
今まで学んできたことをシェアできればと思います。
 
コウタ そもそも、クイック記事について補足をすると、
海外メディアの記事を情報ソースにした短い記事のことです。

今のgreenz.jpには日本の事例の紹介や
長めのインタビューが増えていますが、
海外の事例も発想のもととなるので、
同じくらい重要だと思っています。

ただ、直接取材するのはハードルも高い。
そこで"クイック"に、1500字程度で、
まずは紹介してしまおうとというのがクイック記事です。

参考までに、基本的な構造はこんな感じ。

起:導入。あるある話などで、読者とアイデアをつなげる。
承:プロジェクトの詳細を伝える。
転:立ち上げた人の思いや本質的な価値を伝える。
結:締め。読者の具体的なネクストアクションを促す。

さて、長くなりましたが、今日ふたりには、
このクイック記事を書くときに心がけていることを、
それぞれキーワードにして持ってきてもらいました。
まず、宮本くんは…?
 
宮本さん はい。僕は「Quote and Photo」です。
最初は英文の記事を読むことから始まりますが、
そのときに基本的な情報を抑えるのはもちろん、
「人の言葉」と「写真」をぼくは探すようにしています。
 
コウタ それは、なぜでしょう?
 
宮本さん まず、引用については、
「なぜ始めようと思ったのか?」
「どういう社会をつくろうとしているのか?」といった想いは、
彼ら自身の言葉で紹介するほうが
より伝わると思うからです。
 
コウタ ライターが書く本文ではなく、本人の言葉で。
 
宮本さん はい、一番大事なポイントは、
彼ら自身の言葉で伝えたい。

もちろんすべての発言を使えばいいというわけではなく、
ポイントが伝わるように長い発言の一部を使ったり、
複数の発言を整えたりすることもあります。
それは、インタビュー記事と同じ「編集」だと思いますね。
 
松本さん 同じく僕もプロジェクトの精神の大事な部分は、
その創始者自身の言葉に集約させる形で紹介しています。
結局、最終的に読者の心に残るのは、
彼ら自身の言葉だと思うんです。

例えば、以前カリフォルニアのファーマーズ・マーケット
SHED」の記事を書いたときには、
印象的なフレーズ言葉を記事の最後において、
発言の引用の直後に締める構成でまとめました。
 
コウタ 本人の言葉には、力があるということですね。
宮本くんのキーワードには、もうひとつ、
Photoとありますが、こちらは?
 
宮本さん 写真は、現場の様子を伝えるためにも、
なるべくたくさん探すようにしています。
プロジェクトが動画を発信しているときは、
そのスクリーンショットを使うこともありますね。

QuoteとPhotoの2つが抑えられていると、
記事がよりイキイキしたものになると思っています。
 
コウタ そうですね。さらに写真をどこにいれるのか、
適切な位置を探すのも大事ですね。
松本くんのキーワードは?
 
松本さん Starting with Why」としてみました。
記事の一番の焦点をWhatやHowでなく
Whyに置くということです。

クイック記事で紹介するものって、
一見目につきやすいものが多いと思うんです。
でも、背景にどのような社会の事情や思いがあるのかを
掘り下げないと、読み物として薄いなと感じます。
 
コウタ そうですね。
そこがいわゆるバイラルメディアとの違いでもありますし。
 
松本さん 僕は記事を書く前に、いつも要素整理をするんです。
特に、グリーンズでも大事にしている
「驚きや発見」「強い思い」「インパクト」の3つを、
原文の記事を読みながら探していきます。

同時に、自分がその記事を読んで抱いた素直な直感を、
具体と抽象の両面で突きつめて整理して、
驚き・共感・解決を結びつけていくんです。

例えば、「僕が感じた驚きは、どのような仕組みによって
引き出されたのか」など。
 
コウタ では、ここから参加してくれているライターさんから
質問をいただきたいと思います。
 
(参加者A) クイック記事の読者層について、
みなさんはどのように考えていますか?
 
宮本さん 他のウェブマガジンにはないような、
想いの詰まった長めのインタビュー記事が
グリーンズの魅力だと思います。

それと同時に、もう少しサクッと読めて
世界中のグッドアイデアを知ることのできる記事を
求めている読者もいるのかなと。
 
松本さん SNSなどを通じたソーシャルメディアでの
浸透の仕方によっては、自分が想定していたのとは
違った読者に届くことも十分あり得ます。

例えば、乳がんで乳房を失った
女性のための水着をデザインする「monokini 2.0」という
フィンランド発のプロジェクトを紹介した記事は、
フィンランド大使館のTwitterアカウントを通じて
大きくシェア数が伸びました。

女性のアイデンティティというテーマに
関心を持つ人はもちろん、シンプルに北欧のデザインに
興味を持っている人にも多く読まれたようです。

どんな読者にも「自分ごと」化してもらえるよう、
間口の広い導入を記事のはじめに
きちんと用意しておくことの大切さを改めて感じました。
 
コウタ いい意味で軽く読めることは大事ですね。
ちなみに僕が考えているのは、
海外からいろいろと学びたい方々にとって、
「グリーンズで検索すれば見つかるね!」
と言ってもらうことだったりします。
 
(参加者B) みなさんはどのようにネタ探しをしていますか?
 
松本さん ぼくは気になるウェブサイトのメルマガを登録していて、
そこから更新記事を追っています。
それぞれ編集部が厳選した記事を送ってくれるので、
打率も高いかもしれません。
 
宮本さん ぼくは「Feedly」という
RSSリーダーに気になるウェブマガジンを登録して、
毎日チェックするようにしています。
 
コウタ 同じく。「Feedly」をみて、
タイトルと一枚目の画像でワクワクしたら、
一次選考クリア。

その後に本文を読んで、共感するものがあったら
記事にするようにしていますね。
 
宮本さん 以前、編集長のYOSHさんが
「ネタ探しは筋トレだ」と話していて、
僕もその通りだなと思うんです。

ネタ探しを習慣づけていくことで、
おもしろいネタをたくさん見つけることが
できると思います。
 
コウタ 宮本くん、松本くん、
今日はありがとうございました。
ぜひふたりの経験を参考にしながら、
さらにクイック記事を強化していきたいと思います!
 
 


Q&A

編集長のYOSHさんに質問です。
「最近、知の興奮を感じた本は?」

with Risa Ichimura


メルマガの〆は、greenz people と一緒につくるフリートークの質問コーナーです。
ご質問・ご意見などは people@greenz.jp までお気軽にお寄せ下さい!

 

今回は、会員の市村理沙さんが質問します

Q. 最近、知の興奮を感じた本をおしえてください

人が何に心揺さぶられひらめきを得るかに興味があり、「この人面白い!」と思った人におすすめの本を聞くようにしています。(市村)

▼ ▼ ▼


編集長のYOSHが答えます

A. 読めば読むほどわからなくなる本が好きみたいです。

勉強家冥利に尽きるご質問、ありがとうございます! この機会に、「知の興奮を感じるのは、どんなときなんだろう?」と、シャワーを浴びながら考えてみました。

そして、髪も半乾きのまま書斎の本棚を見渡してみて、目に入ってきたのが、『空海コレクション(2004年〜、ちくま学芸文庫)』『驚くべき学びの世界~レッジョ・エミリアの幼児教育~(2011年、ACCESS)』『技法以前―べてるの家のつくりかた(2009年、医学書院)』でした。いま、なぜ、この三冊だったんだろう?

弘法大師・空海の著作をまとめた『空海コレクション』は、面白くって何度も読み重ねていますが、いまだに内容は掴みきれません。『即身成仏義』の「六大無碍にして常に瑜伽なり」の一節だけでも、自分が読むタイミングによって、言葉の響きが変わってきます。むしろ、簡単にはわかってはいけないと思っている不思議な本です。

次に『驚くべき学びの世界』は、ワタリウムで展示されていたときに買って以来、積読状態でしたが、子どもが生まれたのをきっかけに、自分ごととして、じわじわと読み返しています。モノとの対話を通じた、世界の見方の獲得。以前は、どちらかというと仕事に応用できることはないか、アナロジーとしての探求でしたが、今は自分の子育てにいかせることがないか、ノウハウとして読んでいる気もします。でも、奥が深くて単純にはいきません。

最後に『技法以前』は、いままさに読んでいる途中。こちらはまだ「当事者研究」のあり方が、greenz.jpにおける編集にたくさんのヒントがあるような予感があり、そのぼやけた状態を楽しんでいるところです。おそらく半年後、その影響が自分の振る舞いに現れてくるはず。(だと、いいな)

きっと、この三冊に共通するのは、「とても惹かれるし、確かな手応えはあるのに、読めば読むほどわからなくなる」ということ。いろんな本を読んでいて、ときに悔しくなることがあるとすれば、それは既知の感覚が綴られているからでしょう。むしろ未知なる何かを目の前にして、絶望するくらいの本と、一生かけて付き合っていけたら最高ですね。

で、結局、知の興奮を感じるのは、どんなときなのでしょうか。何やらわからなくなってしまったので、もう少し脳の余白で、考え続けてみたいと思います。その答えはまたの機会に!


 



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
次回の発行日は<4月19日(日)>の予定です。

メールマガジン編集長:YOSH(グリーンズ編集長)
編集:鈴木康太(グリーンズ編集部)
発行:NPO法人グリーンズ
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配信停止については people@greenz.jp まで