こんにちは。日本即興コメディ協会代表の矢島ノブ雄です。
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「司会術」(基礎編)司会の役割から学ぶコミュニケーション術
今回は、司会術(基礎編)についてです。まずは、コミュニケーションにおける司会の役割を理解しましょう。
お笑いの舞台またはテレビのバラエティ番組において、司会が果たす役割は、大まかですが9つあります。それらを細かく見ていくと、ビジネスシーンでも活用できそうなコミュニケーション術が隠れています。
【1】集団のコミュニケーションを中継する
お笑いライブやバラエティ番組では、話が上手な人とそうでない人、インテリキャラ、おバカキャラ、金持ちキャラ、貧乏キャラ、異色の経歴を持った人など、実に多様で個性的な出演者が集まります。そのような中、司会は会話のイニシアチブを握って、司会に集団のコミュニケーションを中継させるよう、出演者に意識づけさせることが大切です。ただし、司会は場をコントロール(支配)するのではなく、ファシリテート(合意形成と相互理解に基づいて協働を促進する)する役割があることを理解してください。
【2】トピックを探して全体に広げる
司会は常にトピック(主要となる話題)を用意しなくてはいけません。冒頭出てきてすぐ、「何の話をしましょうか?」というワケにはいきませんからね。世間で騒がれているニュースでも、自分に降りかかった事件でも何でもいいので、「これは話そう」というものを用意しておきましょう。また、集団でトークをしながら、ある人が話した内容が盛り上がった時は、それをトピックとし、全体に広げることが必要になります。例えば、誰かが街で見かけた変な人の話をして爆笑が起きたら、それ以外の出演者に「みんなも最近変な人と出くわしたことある?」とパスを出してもいいでしょう。
【3】集団にトークの参加機会を振り分ける
話したいことが多すぎて暴走気味になっている人には、司会がそれを止めるよう介入する権限があります。逆に集団の会話に消極的な人には、「○○さんはどう思いますか?」など、会話のチャンスを与えることも必要になります。
【4】脱線した会話を本線に修正する
お笑いの場合、集団での会話は「団体芸」のような一面があり、トピックとは別の会話が展開して盛り上がりやすいものの、脱線したきり戻れなくなることもしばしばです。その際は司会が介入し、本線(脱線する前のトピック)に修正します。ただし、脱線した会話が本線に代わる(または本線を上回る)ほど面白くなると感じた場合は、あえて脱線を許すことも必要です。
【5】タイムキープする
司会は進行台本に基づくタイムテーブルを理解し、個々のプログラムの状況によっては、時間を長めにとったり、早めに切り上げたりする必要があります。また当初用意された進行台本に捉われることなく、そのつど現場にいるディレクターと打ち合わせをし、最終的な時間やペース配分などを決めます。これはビジネスシーンにおいても重要なスキルで、用意した資料に捉われず、状況に応じてプレゼンする内容を変える柔軟性に繋がっています。
【6】場の空気を切り替える(転換する)
司会が仕切りの合間に言う「はい、ということで…」「えー、それでは…」というセリフには、場の空気を切り替えるという重要な意味があります。そのセリフを口にしたとき、集団には別のトピックに切り替わる、あるいは、次のプログラムに進む、ということが周知されます。このように全体を締め、進行を促すような役割を持つ短い言葉は、覚えておいて損はないと思います。ぜひ社内ミーティング等でご活用ください。
【7】全体の空気を掴んでフィードバックする
司会は出演者の言葉に対し、自分はどう理解したかを説明する必要があります。これは明石家さんまさんがよく用いる手法ですが、例えば、「最近○○ってゲームを買ったんです」と出演者の1人が言ったとき、「そうですか」と返すよりも、「あー、ゲームが好きなんだ!」や「流行ってるから買ったの?」など、会話が繋がるパスを出します。単純なフィードバックのようで、聴き手からすれば「なぜそのゲームを買ったのかを知りたい」という要望に応えるような形になっているのが分かります。このように、観客(聞き手)の視点に立って、相手の発言に対して素早いフィードバックをすることが重要なのです。
【8】意見が分かれた際は双方の肩を持つ
出演者の間で議論が巻き起こった際、必ずしも中立である必要はありませんが、司会として自分が「(どちらかというと)どれを支持するか」という立場を明らかにした上で、双方の言い分を受け入れることが大切です。また、話を聞く中で疑問に思ったことは、素直に意見や質問を行い、観客を議論に引きつけるように努力します。
【9】司会が自分のエピソードを話すときは手短に
司会は役割上、どうしても話す内容が多くなりがちになり、意識しないと、他の出演者を抑えて自分ばかりが話してしまいます。名司会と呼ばれるお笑いタレントは、自分の面白いエピソードをコンパクトに話すのが上手です。もしあなたが会議のファシリテーターで、相手の話を聞いて、「自分もこんなエピソード(アイデア)が話せそうだな」と思ったときは、30秒程度で簡単に話すように心がけてみてください。
次回は、司会術(応用編)をお送りします。
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矢島 伸男
日本即興コメディ協会 代表
お笑いコンビ「オシエルズ」
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