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モノガタ x L'Express
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こんにちは。5月19日(火)です。
今週のメールマガジン モノガタ レ クスプレス をお届けしています。
 
#128 < 舞台設定の妙、その2 > 神は細部に宿る
// サイバーパンク小説と米国IT企業の対応をめぐって

舞台設定の妙、その2

我ながら呆れてしまいます。先の2回のメールマガジン。物語が頭に入らない状況に私自身がなってしまっていることをお伝えしました。その結果、"詩" に落ち着いた(アレン・ギンズバーグ)お話を。そして先週は遠い未来の話ならば、ということでアイザック・アシモフの古典SF小説『 ファンウデーション 』がいまの自分にあっているなどとお伝えしていました。

が、先の日曜日に思わぬ情報(まだSNS界隈を練り歩く妖怪のような情報に過ぎませんが)を得て、近未来のサイエンス・フィクション小説に戻ってきつつあります。


その作品は『 スノウ・クラッシュ 』です。1992年の作品で、いわゆるサイバーパンクと呼ばれるジャンルになります。

サイバーパンクの世界観は、映画『 ブレード・ランナー 』をイメージいただくとよいかもしれません。

参考まで)ブレード・ランナー(予告編)
https://youtu.be/WYhEZn3S1IA


この作品も 舞台設定のうまさ が光ります。そして、この影響を受けている人たちがいます。それは...


 

サイエンス・フィクションの "ザ・醍醐味"

この『スノウ・クラッシュ』という作品(作者:ニール・ステファンソン)は、いまをきらめく米国IT企業の代表たちが影響を受けたSF小説郡にあげる作品です。


舞台設定はこのような感じ。


・デリバリー(配達人/主人公)が、現実世界とサイバースペースを駆け巡る。

・世を悩ます問題はコンピュータ・ウィルス。

・しかも、サイバースペースから現実世界に出てくる新種のウィルス。


いかがでしょうか。


どこか、いまのこの現実世界と重なる気がしないでしょうか。


・外出ができないので通販を頼り、
 配達人にとどけてもらう現実世界。

・外出ができないので、ネット会議で進行するビジネス。
 ゲームの世界では、バーチャルな街(島)を作るゲームが流行っている現実。

・そして、感染力の強い、未知のウィルス。


まるでいまの現状を予測したような作品に思えてきます。



実は作品、アメリカIT企業の新型コロナ対策として "にわかに" 注目されつつあるようです。


その名も、「スノウ・クラッシュ・ストラテジー」。


想像の作品が現実に影響を与える
これぞ、サイエンス・フィクションの醍醐味です。


もちろん、トラブルは喜ばしいことではありませんが
人間の想像力の偉大さ、そして物語りのチカラを感じざるを得ません。


何しろ、この作品が発表されたのは1992年なのです。


インターネットの下地ができたは、冷戦終結後と言われてます。ですので、サイバースペースやコンピュータウィルスを扱っていた作品はまさに最前線の作品であったといえます。

 

神は細部に。そしてRNGの世界へ

作者ニール・ステファンソンはいまも精力的に作品を出し続けていますが、中でも有名な三作品あります。まずはご紹介している『 スノウ・クラッシュ 』。次いでナノテクノロジーを扱った『 ダイヤモンド・エイジ (1995)』。そして電子通貨を扱った『 クリプトノミコン(1999) 』。


『 ダイヤモンド・エイジ (1995)』では、スマホやタブレットのような道具が出てきており、アマゾン社の電子書籍端末は本作からヒントを得ていると言われています。


このダイヤモンド・エイジの作中でも注目したいのが ナノテクノロジー です。


今後のテクノロジー進化は、

R(ロボティクス)2020年代

N(ナノテクノロジー)2030年代

G(ジェネティクス:遺伝子)2040年代

を辿るとも言われています。


この新型コロナ騒動を経ると、人を介さなくともよい場所は、機械化(ロボティクス)が進行していくのではないでしょうか。ウィルス罹患の恐れがなくなります。

そして、ロボットは小さくなり(ナノテクノロジー)へ。分子レベルの技術が発達していくと遺伝子工学へと進んでいく... の... かな!? と思います(先のことすぎて笑)。


そうしますと、ニール・ステファンソンの作品群は、どこまで未来を描いていたのかを楽しむには抜群な作品に思います。


そしてこの著者のセンスは、未来の道具たちについては、話の本論とは関係ない設定のところで、細かく語られているところにあります。

あまりに描写が細かすぎて、私は読み気がなくなるほどです。

しかし、この設定をも楽しんで読めた人たちが、米国のIT起業家なのかもしれません。


物語における、舞台設定。やはり大切ですね。


しかしひとつ残念なお知らせありまして、上記にあげた作品群は日本語訳が出ていながらも、すべて絶版になっています。


いつぞやのメールマガジンに記しましたが、実店舗の洋書売り場に行くと、サイエンス・フィクションコーナーは、誰かしら立ち読みをしている人がいます。

サイエンス・フィクションは英語圏ではメジャーなジャンルとして確立しているようです。日本語も出版社に気張っていただきたいと切に願います(ただ、未知の技術の翻訳はたいへんですよね...)

 

コーヒーブレイク

そして「スノウ・クラッシュ・ストラテジー」について(わかっていることを)。この言葉の意味は、スノウ・クラッシュの舞台設定と関係します。

「スノウ・クラッシュ」の世界では国や政府が機能をしていません。では、その役割を担っているのは誰かと言うと、企業(や個人)、なのです

区画や通りには企業名がつけられ、その区画間は企業の統治になっている。同じく、サイバースペースの取り決めも企業群が行っています。

新型コロナ・ウィルスに対して、政府が打てる施策は限られています。そこで「スノウ・クラッシュ・ストラテジー」と呼ばれるものが話題になる流れになっています。

米国においては、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、そしてアマゾン創業者のジェフ・ベゾスが私財をなげうって新型コロナ・ウィルス対策に向かっています。

恐らく彼らとて、まったくのボランティアではないでしょうから、なにがしかの見返りがあるだろうから対策を進めていると想像されます。

いわゆる、企業による自治のようなものが加速していくのが「スノウ・クラッシュ・ストラテジー」と呼ばれているようです。

この自治が進んでいくと、"通貨" にも変化が生じ、仮想通貨が改めて注目されるのではという流れもでてきつつあるようです。


とはいえ、もちろんこれがよいとは思わない声も多いようです(悲観的で、あまり進みたくない方向として捉える)。民主的ではなくなりますから。


まさに現況を予想するかのような『 スノウ・クラッシュ 』と企業による自治の世界。次いでナノテクノロジーを扱った『 ダイヤモンド・エイジ (1995)』。そして電子通貨を扱った『 クリプトノミコン(1999) 』。

それぞれ気づきはありそうです。

わたしも図書館が再開したら、これら一式を予約をしてみようかな。




:::編集後記:::
ちなみに、スノウ・クラッシュと同じく有名なSF作品で主だったものを。

「エンダーのゲーム」

「砂の惑星(デューン)」

「ファウンデーション」シリーズ

「ニューロマンサー三部作(ニューロマンサー、カウント・ゼロ、モナリザ・オーヴァドライブ)」

はアメリカのIT企業家が挙げることが多いです。

もし興味がありましたら、どうぞ(^^)
 
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