【チルチルのひとりごと】
イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、ヒチ、ハチ、、、と聞こえてくる。場所はブリュッセルの下町のプール。

数往復しただけなのに、激しく息を切らしながら水から顔をあげると、日本語で数字を言う人が目の前にいる。

東欧か中東かよく分からない黒髪のお兄さんが、これまた出自がよく分からない肌の少し濃い女性にKARATEを教授している。プールの浅めのところで、ステップとパンチを繰り返しながら、初心者講座が開催されている光景が見えた。

ブリュッセルのプールにもいろいろあるが、地域によって集う「人種」が異なる。瀟洒な住宅地では白人率、エリート率が高まるし、ガチャガチャとした下町では有色人種とストリート感が高まる。個人的にガラは悪いが人情に深い下町のほうが、なんだか人間らしくて気に入っているのだけれど、それは自分もガラが悪いからなのか。

この若いカップルには、ずいぶんと肥満気味の男の子がついていて、３人でKARATEの練習をしたり、発砲スチロールの浮きで遊んだり、ずいぶんと仲がよさそう。

しかし、ぽっちゃり坊やは、肌が真っ白で、おそらくお兄さんの息子のようだが、その身体的特徴から推察するに、肌の浅黒い女性が母親というわけではなさそうだ。ミチルのシャワー室でのリサーチによると、カップルは夫婦ではなく、付き合っている間柄のようだ。

夫婦や家族にもいろいろな形があるのがベルギー。

３人は深い絆で結ばれた家族にしか見えないが、もしかしたらこれまでいろいろ困難を乗り越えてきたのかもしれない。


血がつながっているばかりが家族ではない。



Tyltyl 4.mar.2019