AI KOKO GALLERYは2019年6月28日(金)よりESPlabの個展を開催いたします。ESPlabは、プロダクト実装を通じてブロックチェーンエンジニアとアートマネージャーの交流を図ることを目的とした、スタートバーン株式会社の社内組織です。
その特性を生かし、今回は現代美術とビットコイン双方で議論される合意形成の文脈を接合し、現代美術の定義に関する意見表明をチェーン状に投稿し合うゲームを作成いたします。
来場者に継承される文脈と美術的価値の議論の場に、ぜひご参加いただけますよう宜しくお願いいたします。
ESPlab / The Consensus
ステイトメント: Marcel Duchampの Fountain (1917) が代表するように、ある対象がどのようにして美術と見なされるのかという問いは、現代美術が扱う最も重要な主題の1つである。例えばHans Haackeは、1970年代前半に不動産や美術作品の来歴を所有者の社会的身分を含めて列記した作品群 Shapolsky et al. Manhattan Real Estate Holdings, A Real Time Social System, as of May 1, 1971 (1971) や Manet-Projekt ‘74 (1974) を通じて美術的価値の背後に存在する人間関係を詳らかにし(前者はGuggenheim美術館、後者はWallraf-Richartz美術館からそれぞれ展示を拒否された)、またより最近ではWiliam Powhidaが Art Basel Miami Beach Hooverville (2010), After ‘After the Contemporary’ (2018) などの作品群によって業界の慣習やヒエラルキーを風刺的に示している。両名は特に明示的な例だが、美術的価値がどのように決定するかという合意形成の問題は(程度の差こそあれ)全ての美術作家が向き合わねばならない共通の主題であり、現代美術そのものを構成する要素の1つとすら言えるだろう。
今日ブロックチェーンと呼ばれる技術を要素に持つ Nakamoto (2008) によるBitcoinは現在も様々な観点から議論されているが、その新規性は集権的な管理者が存在しないネットワーク上での合意形成手法にある。要約するならば、Bitcoinは (i) 取引履歴を格納するブロックの作成に計算資源の投入を必要とする(Proof of Work) (ii) 最長のチェーンを構成するブロックを正統な記録とする(Nanamoto Consensus) (iii) 正統な記録を作成した者へ報酬としてBitcoinを新規発行する(Coinbase) という3点の主要な特徴を持つインセンティブ設計を通じて、非整合的な取引の記録を防ぐ合意形成を試みた。この合意形成は当初Bitcoinの移転のみを対象としていたが、あるプログラム実行のトリガーとなる情報の移転を管理する後続のEthereumが代表例であるように、現在では集権的な管理者に依存しないという特徴を維持しつつ取扱情報を一般化するための手法が多く検討されている。