Copy

Magnet Newsletter by Ximera, Inc. No.010

GA4移行まであと1年。おさらいしたい注目指標「エンゲージメント」とは?

ウェブサイトの分析ツールとして圧倒的な知名度とシェアを誇るGoogle アナリティクス。2020 年 10 月には新バージョン「Google Analytics 4 property(以下「GA4」)」が公開され、従来版のユニバーサル アナリティクス(以下「UA」)は 2023 年 7 月 1 日以降はデータ計測・ダッシュボードの閲覧ができなくなることが明らかになりました。GA4は計測できる指標や機能が大幅にアップデートされ、UAの計測データを引き継ぐことができないことから、もはや別物といっても過言ではありません。

キメラは来週 7 月 21 日(木)に、無料ウェビナー「XIMERA’s Insight 〜GA4への対応、一体どうすれば?メディア運営のためのKPIとデータ分析体制を徹底解説〜」を開催します。GA4の概要を簡単におさらいするとともに、デジタルメディアに特化したKPIやデータの分析体制について解説します。ただいま参加登録を受け付けておりますので、ぜひご参加ください。

ウェビナーの詳細を確認する

本ニュースレターのヘッドラインにはメディアビジネスに関わる皆さんに役立てていただきたい解説記事を掲載していますが、今回はウェビナーの内容を先取りし、当日をさらに楽しんでいただくための情報をお届けします。

お題はGA4の測定指標のなかでも特に注目したい「エンゲージメント」についてです。エンゲージメントはソーシャルメディアの測定指標としても用いられることから、何となく耳にしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、その定義ははっきりしておらず、なぜこれほど重視されているのかは意外にも知られていません。そんなエンゲージメントに対する理解を深めるためのヒントをお伝えします。

UA→GA4の変更点

Googleのドキュメントによると、GA4ではUAで使われていた代表的な指標のいくつかが廃止され、エンゲージメントに関する指標に置き換わることが明らかになっています。

おもな変更点

  • 「直帰率」が廃止され、新たに「エンゲージメント率」が追加

  • 「平均ページ滞在時間」が廃止され、新たに「平均エンゲージメント時間」が追加

  • 「平均セッション継続時間」が廃止され、「セッションあたりのユーザー エンゲージメント時間」が追加

「エンゲージメント」が示す内容については、以下のように説明されています。

「エンゲージメント率」の説明より

「エンゲージメント セッション」の割合。「エンゲージメント セッション」は、10 秒を超えて継続したセッション、コンバージョン イベントが発生したセッション、または 2 回以上のページビューやスクリーン ビューが発生したセッションの数です。

「平均エンゲージメント時間」の説明

アプリの場合はフォアグラウンド表示されていた時間の平均値、ウェブサイトの場合はブラウザ上でフォーカス状態にあった時間の平均値。これを「ユーザー」で割って算出したのが「平均エンゲージメント時間」です。

UAでは単にページへの訪問やセッションの継続時間によって測定されていた指標が、GA4では具体的な行動を伴っているかどうかを問われるようになるため、よりシビアな測定結果が見込まれそうです。

エンゲージメントとは、読者の関与度をはかる指標

そもそも、このエンゲージメントという指標をどのように理解すればいいのでしょうか?

Googleのヘルプページを参照すると「サイトやアプリに対するユーザーの操作です」と、漠然とした表現にとどまっています。

米ハーバード大学のジャーナリズム研究所であるニーマン・ラボは、早くも 2010 年にその定義を提唱しています。ニーマン・ラボによると、「エンゲージメント」は 7 つの変数を足し合わせた数式で導き出せるといいます。

エンゲージメントを求める数式

image: NiemanLab

それぞれの変数の内容は、以下の通りです。

読者エンゲージメントを導き出す変数

Ci=Click: 1 回のアクセスあたり最低 6 ページビューを生んでいる訪問者数(画像ギャラリーを除く)

Di=Duration: サイトに 5 分以上滞在している訪問者数

Ri=Recency: サイトに毎日アクセスする訪問者数

Li=Loyalty: サイトに会員登録しているか、週に 3 回以上訪れる訪問者数

Bi=Brand: サイトに直接流入する訪問者数(ブックマーク、URL入力、メディア名の指名検索)

Ii=Interaction: コメントや議論を通じてサイトと相互交流をはかる訪問者数

Pi=Participation: コンテンツを外部にシェアしたり、画像・ストーリー・動画を投稿したりしてサイトに「参加」する訪問者数

計算が複雑なので、この数式をそのまま測定指標として使うことは現実的ではありませんが、GA4やソーシャルメディアで「エンゲージメント」と表現されているものの全体像をつかむのに役立ちます。一言で表現するならば、「読者が特定のサイトに対して、どれくらい積極的に関与してくれているか」を測るための指標といえるでしょう。

欧米メディアは 2010 年代から活用、日本でも広がる

読者がサイトを訪問した後の関与度合いを測定できる「エンゲージメント」は、PV(ページビュー)に代わる評価指標として、すでに多くのデジタルメディアやメディアプラットフォームに採用されています。

欧米では、2013 年にコンテンツプラットフォームの「Medium」が自社の指標は「Total Time Reading(読んだ時間の総計)」と述べ、2017 年にはFacebookがページビュー目当ての「釣りタイトル」を規制しています。こうしたプラットフォーマーたちの動きと呼応するかのように、2018 年にはBoston Globeのシニア・マネージャーはDIGIDAYにKPIとしてのページビューから脱却する動きがあると語っています。

メディアビジネスにおいて長らく無料広告モデルが支配的だった日本において、当初エンゲージメントは広告効果の文脈で言及されるにとどまっていたようです。フェイクニュースやキュレーションメディアなどの信頼性を二の次にしたメディアの運営姿勢が広く問題視されるようになったこともあり、2010 年代中盤ころからPVに代わる指標を模索する動きが活発になりました。2019 年にはエンゲージメントをテーマとしたイベントにNHK・産経・ダイヤモンド・インプレス・Yahoo!が登壇、2020 年には日経新聞社が自社の有料購読者のエンゲージメント向上について講演を行うなど、一部の大手メディアを起点にエンゲージメント活用が広がっているのです。

7 月 21 日のウェビナーでは、エンゲージメントの考え方を自社に導入するためのヒントや、エンゲージメントを高めるために有効な施策についてもご紹介します。今回のヘッドラインでエンゲージメントについて興味を持ってくださった方は、ぜひウェビナー本編もお楽しみにしていただければ幸いです。

それでは来週、画面の向こうでお目にかかります。

中山明子

あなたが自社のデジタルメディアで

もっとも重視している指標はなんですか?

今後のニュースレター運営に役立てていくためのアンケートです。ご協力よろしくお願いします。

アンケートに回答する

サブスクリプション管理プラットフォームAE 新機能のお知らせ

AE は複数記事をコンテンツパックとして販売できるようになりました

AEロゴ

キメラ社が提供するサブスクリプション管理プラットフォーム「AE」は、あらたな課金形態として「コンテンツパック型」に対応しました。従来からのサブスクリプション型、単記事型に加わる、あらたな課金形態です。

  • 複数の記事を束ねたコンテンツパックを買い切りで販売できます

  • 特集・連載、特定テーマなど、読者のニーズや編集の観点に沿ったコンテンツパックを設計可能です

  • 「単記事以上・サブスク未満」の読者に、適切な商品と機会を提供できます

AEを詳しく知る

Ximera Media Next Trends #35 / Text: Ikuo Morisugi

クリエイターエコノミーの実態とあるべき支援

収益分配の実態は勝者総取り

メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズXimera Media Next Trendsの第 35 回となる今回は、「クリエイターエコノミーの実態とあるべき支援」について、取り上げます。

古くは 2011 年頃よりYoutube Starと呼ばれるYoutubeで収益を上げる人々が出てきたことに端を発し、近年ではYoutube、TikTok、Twitch、Spotify、Substack、またはその領域でクリエイターが収益を得ることができるようになりました。こうした状況はクリエイターエコノミーと呼ばれています。今やクリエイターは世界で 5000 万人以上存在し、1042 億ドル(約 13 兆円)以上の市場規模があると言われている大きな産業となっています。

一方で十分な収益を稼いでいるクリエイターは多くはありません。5000 万人以上いるクリエイターの内、いわゆる趣味レベルを抜け出し、生活に困らない年収を得ているクリエイターは1%しかいないと言われています。

例えば、下図のように各音楽プラットフォームでの 100 万再生あたりの収益(Per Million Streams)は、Spoitfyで 3,180 ドル(約 41 万円)、Apple Musicでも 8,000 ドル(約 104 万円)で、アメリカの東海岸で生活に困らない年収レベル( 60,000 ドル = 約 780 万円程度)を稼ぐには、それぞれ、Spotify 1886 万回、Apple Music 750 万回の再生が必要です。

記事のつづきを開く
  • Magnet Newsletterをご覧いただきありがとうございます

  • 受信を希望されない場合は配信停止ページよりお手続きください

  • 当メールアドレスは配信専用です

  • 過去のニュースレターはキメラのウェブサイトでご覧いただけます

Making a better world for readers, creators and publishers.