2. てんご de たまりば – 青葉区寄り添い型生活支援事業.5 (てんご)
北プラスタッフの角です。まさかの連続担当です。今回の眺望通信ですが、夏休み企画の一環で川崎市にある 「フリースペースたまりば」に小学生4名とスタッフ・ボランティアさんとで遊びに行ってきた話をしたいと思います。パノラマは小学生を対象とした放課後の居場所事業【.5(てんご)】も運営しているのですが、そこの夏休みお出かけプログラムに、「お兄さん」スタッフとして私にも白羽の矢が立ったわけです。実際には「お兄さん」というほど若くない気もするのですが、そういう役回りで同行させていただいたので、その1日を振り返りながら、思ったこと・考えたことをお伝えできたらと思います。
個人的な衝撃は、まず集合が9時で9時半からお迎えが始まることです。世間一般では全く普通の時間なのでしょうが、北プラに若者が集まり始めるのは13:00くらいです。朝早くに起きられない若者が多いからです。そんな時間感覚に慣れている身からすると9時から始まるプログラムはそれだけで新鮮です。そして個々のお家にお迎えに行くことも、居場所で来所を待ち受けることに慣れている私としては不思議な感覚です。北プラでは「(ちょっと)公的な場」としてメンバーもスタッフも通っていると私はイメージしているのですが、実際に生活を送っている家の近くまで迎えにいくということは、もっと「私的」なことに近いというか、暮らしの中に関わっていくような実感があり、対象年齢が違うだけではないんだなと思いました。
そんなことを考えていると続々と小学生たちが車に乗り込んできます。彼ら彼女らはとても賑やかで、大人の理解を許さない話題転換にアタフタしている間に「たまりば」に着いてしまいました。「たまりば」は子どもが自由に遊ぶことのできる広大な原っぱ(と沼)を有したフリースペースで、手作りの木製ウォータースライダーもありびしょびしょ、泥だらけになって遊ぶことのできるような場所です。スタッフから解き放たれるや否やもう本領発揮というか、子どもは遊ぶことが自然なんだなと思わされるような爆発具合。水をばら撒き、泥はぶちまけ、バケツは振り回し、私のみぞおちを殴り、遊びまわります。北プラではメンバーと一緒に精神世界に旅をしていることが多いので、こういった身体優位な関わりもまた新鮮で、一瞬で距離が近くなって仲良くなっていくことも独特だなと思いました。そんなこんなで「えんくる」というコミュニティスペースで一服してから、同じく車で帰路につきました。帰りの車内で印象的だったのは、非常にどうでもいいことでそこそこな言い合いが勃発していたことです。疲れ切って眠いというのもあると思うのですが、不機嫌さや気に入らないということを恐れず表現する姿は、幼さでありながらも潔さすら感じます。
日中の遊んでいる部分も含めてすごく直線的にコミュニケーションを取っている姿が、北プラはもちろん日常でも小学生と関わることのない自分からすると、改めて新鮮でありシンプルに「すごいな」と思うのです。彼ら彼女らのように感情を素直に表現することは私たちには中々出来ないですし、むしろそうすることに怖さすらあります。(それはいい意味では“大人”であるということなのかもしれませんが。)そして北プラの若者たちはより強くその恐れを抱いているように感じています。自尊感情を傷つけられそれが持つことが出来ない環境で生きてきたがゆえに、自分の感情を表に出すことやそもそも自分の思っていることや感じていることを尊重するということ自体が出来ないことが多く見受けられます。てんごのように小学生の時に肯定的に関わる大人に囲まれるような環境は、状況がより厳しくなる前に、何より経験する必要のないしんどさや辛さに晒されず育っていくことの一助になるのではないでしょうか。
一方で難しいなと感じたのは、“パノラマが関わるような”子どもたちであるという側面です。つまりなんらかの支援が必要であるとされている家庭及び子どもであるということです。何が難しいのかといえば、ここまで読んでいただいてわかるように、一見すると普通の元気な子どもたちであり、その背後にあるものが何なのかが一目見ただけではわからないのです。もちろん北プラの若者たちの抱えているものも明快ではないですし、“理解している”と簡単に言うことは出来ません。しかし、断片的であっても「どういったことが辛かったのか、今辛いのか」「どのように状況を改善したいのか」ということを持って来所してきたり、その後に言葉にしたり、考えることを促し協力していくことが出来ます。対して小学生の子どもたちは、適当な言葉や思考の枠組み、経験に対する認知・認識を構築している最中であり、何が支援のニーズなのかが本人から滔々と語られるということは中々想像し難いでしょう。そういった中で関係を取り結んでいくこと、必要である支援を適切に提供していくことは、私が日頃いる北プラとは異なる実践の知恵や技術が大事になっていくのだろうと思いました。
---このように日頃の活動との様々な違いを感じることのできるプログラムでした。1日のみの同行なので浅くしか関わることが出来ませんでしたが、少しでもみなさまにパノラマの活動の内容が伝わったらと思います。お読みいただきありがとうございました。(角 亮典)
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