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未来を拓くシュタイナー教育

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.124 2022.1.19
自分の道を歩みだす一歩
~8年生のチャレンジキャンプ~

7、8年生の子どもたちはいわゆる思春期真っ只中だ。今まで権威としていた親や教師から離れ、自分の道を歩みだすその一歩が思春期で、そこにはいつも葛藤や衝突が生じる。自分を試したい、自分たちが何かを変えていきたい。無意識の領域で彼らは問うている。このような時期に、「チャレンジキャンプ」と称した大きな挑戦を行うのは彼らの心にある種の満足感と根源的な自分の力を感じられるきっかけとなるのである。
 
今回は、丹沢の山深い場所にキャンプが決まった。生徒の安全を考え、自然体験キャンプを主催している戸高雅史さん(K2無酸素登頂成功者)に引率していただく。テントはなくタープのみでの宿泊、食事は火を起こすところから始め、料理はすべて自分たちで作る。やる気満々の男子、不安げな女子もいるなか、2泊3日のキャンプが始まろうとしている。
 
夏場とはいえ、2泊3日分の食料、寝袋、マット、着替えを入れるとどう頑張っても大きなザックはパンパンで重い。これを担いで何キロもの道のりを歩くのだから、子どもたちは自分の持てる限界というものをまず知ることになる。子どもによっては体と同じくらいの大きさのザックを背負うことになる。
 
ひたすら山道を歩く。ゆっくり一歩一歩、苔むした林道を抜けていく。肩にのしかかる重み、言葉数も少なくなる。前の人との距離が開かないようにと必死でついていく。ザックの重さに負けない力は、自分自身の力だ。子どもたちは意識にのぼらずとも感じていたことだろう。ひとりではつらい道のりも、友達と共に歩むことで生まれる心強さも。こうして山を越え、誰ひとりとして音を上げることなく目的地に到着することができた。
 
今回宿泊する森は、すぐ側に川が流れ原生林がそのまま残っている場所である。どことなく清らかさを感じることができる土地。けれど、のんびりしてはいられない、キャンプ期間に大雨が予想されており、今にも降り出しそうな勢いの雲が頭上を覆っているのである。子どもたちは急いで班に分かれ自分たちが寝やすく、かつタープがうまく張れる場所を探していく。
 
見つかったと同時にスコールがやってきた。雨がタープに溜まらないようにうまく張らねばならない。カッパを着てもずぶぬれになってしまうほどの大雨で、皆必死で荷物を守り雨で重くなるタープを張った。ひとりは木にロープをひっかける、ひとりは高さを調整する。友達の協力なくしては成しえない。どこの班も意外にも手際よく張ることができた。壁は無いが屋根があることのありがたさをひしひしと感じたことだろう。水が流れ込まないように水が抜けるように溝を掘り、また濡れたものを乾かすための場所も必要だったり、雨が浸み込んでこないための工夫が必要であったりと自分たちで考えて試行錯誤していた。うまくいったときの満足感もきっと感じたことだろう。
 
自分たちの秘密基地ともいえる場所が完成したら、火を起こすための木を集めてくる。折った時にパキッと音がするものが良いことを教えてもらい探すのだが、雨で濡れていたためこれがまた一苦労であり、火を起こすこともなかなか難しい。煙ばかりが出て、いっこうに火が付かず嘆いている子どもたちもいたが、火を起こさないことには夕食にありつけないのだから、諦める訳にはいかない。
 
こうした体験もそれぞれが自分たちでほとんど自立して活動する。食べる時間も、火を囲んで話す時間も自分たちにゆだねられている。自分たちで作った温かな夕食は、どんなにおいしいか容易に想像することができる。火を見つめながら、いろいろ話をする時間はキャンプならではの貴重な時間である。
 
タープの下、増した川の轟音、夜中に聞こえる鹿の甲高い鳴き声を聞く。日が差し込んだ朝には川で遊ぶ。このキャンプは時間に追われることもない。退屈になることもない。ゆったりとした時間が流れていて、時間を聞いてくる子どもはひとりもいなかった。自由時間には、鉛筆と紙をもって朝の光差す森をスケッチする子や、川にざぶざぶ入って声を上げている子、森をうろうろと散策している子など、自分らしくいる姿が印象に残っている。
 
このキャンプでは、雨という自然の厳しさに触れ、互いに協力し合うからこそできることがあることを知っただろう。また、互いの新たな一面を見られたようだ。不便さのなかにこそ生きることの確かな手ごたえがある。達成感や充実感も。自分の手にゆだねられている、それをやり遂げられたことは何にも代えがたい体験だったのではないだろうか。どの子のなかにも、当たり前にあるものへの感謝。家に帰った時のお風呂、布団もトイレですらありがたいと感じたようだ。
 
子どもたちの心にはもうひとつ、ガイドをしてくれた3人の大人の存在が大きく占めている。どんな時にも、大きな山のごとく支えてくれ、温かい存在だった。登山家として活動されていた戸高さんの言葉もまた、子どもたちのなかで生きていることだろう。
 
ライター/教員 岩﨑有華

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