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アジア人に対するヘイトクライムについて

昨年からのパンデミック、BLM運動の流れからか、アジア系アメリカ人に対するヘイトクライムが増加しているという報道はご存知かと思います。そんな中、2月25日にシアトルのインターナショナルディストリクトで日本人の方が襲われたという報道がありました。(こちらシアトル総領事館からの注意喚起メール)シアトル地域は全米の中でもアジア人・日系人の人口比率の高い都市であり、日本人にとって住みやすいというイメージを持たれている人も少なくないと思われます。しかし、このような事件がおきたことにより、改めてアメリカ社会における人種問題などを知っておくべきだと感じ今回はヘイトクライムについて、JIA Foundation の役員でダイバーシティトレーニングを担当する事もある森山陽子が記させて頂きます。

*文中でアジア系アメリカ人と記されている個所がありますが、英語の記事ではAsian Americanとなっている部分の訳になります。アメリカ国籍のアジア人という意味ではなく、在米のアジア人とご理解ください。
 

ヘイトクライムとは?
ヘイトクライムとは、特定の人種や肌の色、宗教、民族・国籍、性別、年齢、障害、性的指向のアイデンティについての偏見(バイアス)・否定的な感情にもとづく、嫌がらせや誹謗中傷、脅迫、暴行などの犯罪のことを示します。ちなみに、偏見とは「かたよった見方・考え方。ある集団や個人に対して、客観的な根拠なしにいだかれる非好意的な先入観や判断(大辞泉より)」と定義されていて、不公平だったり差別的な意味合いを持ちます。
ヘイトクライムと認められるには、1)身体的暴行や脅迫などの犯罪があり、2)その犯罪は被害者に対する加害者の意図(偏見から来る動機)があったことが確認・立証されなければなりません。

Hate Crimes | Department of Justice
 
そのため、加害者が捕まっていなかったり、被害にあった状況から上記のことが確認できない場合は、単なる暴行事件として処理されてしまう事もあります。また、被害者が英語を十分に話すことができない場合は、警察に報告されないケースも数多く、実際の数字は公に報告されている物よりもずっと多いだろうと言われています。そんな状況ではありますが、FBIによると2019年は7314件の報告がありました。そして、Center for the Study of Hate and Extremism によると、2020年、アメリカの人口の多い順上位16都市で発生したアジア系アメリカ人に対するヘイトクライムは122件あり、前年比149%増だったそうです。(なんと、ニューヨーク市は前年比833%増でした。)また、NPO団体Stop AAPI Hateによると、2020年の3月から12月までに発生したアジア系アメリカ人に対するヘイトクライムは2808件あり、そのうちの43.8%がカリフォルニア州、13%がニューヨーク州、4.1%がワシントン州で発生しています。

なぜアジア系の人に対するヘイトクライムが増えているのか?
2020年はコロナウイルスのパンデミックの年だったと言えます。そのためロックダウンによる経済的なダメージを含む、あらゆるストレスを多くの人が感じた年でした(2021年の今現在も、継続中)。コロナウイルスの第一報が中国だったことから、このパンデミックとそれらに伴る不具合はすべて中国のせいであるという偏見がああたかも事実のように信じられ、そのストレスやフラストレーションのはけ口として(中国人かどうか判断できないので)アジア系がターゲットにされているといわれています。(シアトルキング郡の副検事のLeandra Craftも、同様の発言をしています

ヘイトクライムへの対応
Center for Anti-violence Educationにより、どうすればヘイトクライムから身を守ることができるのかをまとめたStay Safe from Hateという小冊子が作成されています(こちらより無料でダウンロードできます)。日本語を含むアジアの言語6か国語で記載されています。
記されている内容にはセルフディフェンスの動きの紹介などありますが、攻撃に対してどう勝つかではなく、平和的な対応法がコンパクトにまとめられています。例えば、Assertive Communicationという、自分の気持ちや意見を相手のことを尊重しながら適切に伝えるスキルだったり、Non Violent Communicationという共感力と思いやりをベースとした対人関係スキルをもとにした内容になっています。どちらのスキルも、ドメスティックバイオレンス防止やリーダーシップトレーニング等でも使われている、実証済みかつ効果的な方法ですので参考にしていただければと思います。

  

基本は、自分の安全を確保することです。危険な状況からは逃げてください。突然襲われてしまったりして対処できず被害にあってしまった場合は、警察に連絡しヘイトクライムのリポートをしたい旨をお伝えください。その際、加害者の特徴や言われた事、された事、時間や場所など詳細な状況を伝えてください。
また、STOP AAPI Hateのサイトへも報告お願いいたします(日本語・第3者からのリポートも可能です)。集められた情報は、ヘイトクライム関しての教育用の資料を作成したり、ヘイトクライムの収束を働きかける政策のために使われます。
もし、あなたが直接被害にあったわけではなく目撃者であった場合、自らに危険がない限り積極的にかかわっていくこと(直接対応しなくとも、警察に連絡したり写真や動画を取って記録をするなど)は大変意味ある行動です。上記にも記した通り、ヘイトクライムと立証するためには確かなる証拠が必要ですので、そういった意味での協力・対応をお願いします。
ヘイトクライムというのは、被害者が自分の存在を(示す要素を)否定された結果におこる事件であることから、被害者の心理的苦痛は通常の暴行被害者よりもひどいと言われています。ですから、被害者の方には「あなたは何も悪くない。私はあなたの見方だ」と寄り添ってもらえればと思います。

ヘイトクライムを防ぐためには?
何かが起こってからでは遅いです。どうすればヘイトクライムを防止できるのでしょうか?それを考えた時、差別やハラスメントの防止対策で言われている項目にヒントがあると私は思います。(企業や学校のポリシーなどには以下のような内容が一般的に記されています)。
  • 各文化や違いを尊重する。
  • 話す内容や態度に注意する。
  • 特定の人種や肌の色、宗教、民族・国籍、性別、年齢、障害、性的指向に対する内容のジョークを言ったりしない。
  • 差別やハラスメントに値する言動を取ったり、容認したりしない。
  • ハラスメントや差別、ダイバーシティに関するトレーニングをうける。
  • もし不適切な発言や行動があった際は、速やかに報告する
しかし、これらは主に自分が加害者にならない為の項目であって、被害者にならないためにはどうするかが記されていません。今回の記事を書くにあたりリサーチしましたが、そういった記事を見つけることができませんでした。しかし、こちらの動画の中で話されていたことがヒントになると思うので以下抄訳・意訳になりますが記しておきます。

『人種差別に対する理解の欠如がヘイトクライムにつながっているのでしょう。歴史的に映画や漫画などを見ても、アジア人は悪役だったり、ちょっと変わった奇異な存在として描写されていたことから、そのイメージが刷りこまれている部分があると思われます。この状況を変えていくには、私達各個人が自分の声をあげて、本当のアジア人を知ってもらうことが必要です。事実に基づいた歴史を知ってもらうことや、今のアメリカで何が起きているのかを学校で学ぶことでも状況が変わってくるはずです。私達の気持ちをシェアして私達もアメリカ人であること、ステレオタイプに惑わされることなくリアルな一個人を知ってもらうことが、スタートだと思います。』

社会や国のあり方を変えたいと思ったら、自分は何をすればよいのか?とんでもなく大きな問題を前に、どこから始めればよいのかわからず行動を起こせないまま何となく過ごしてしまっているかもしれません。しかし、全ては各個人の行動1つからのスタートになります。一人一人がヘイトクライムに関する知識を身につけ、それを他の誰かとシェアする事。自分自身を例にとって「アジア人ってこんな人」という事を誰かに知ってもらう行動が、他の誰かの知識となり仲間を増やすことにつながります。その数が増えれば、それがコミュニティなります。その輪が広がっていけば、社会への影響力も増していきます。

JIA FoundationはCommunity・Education・ Identityを活動の柱にしています。今回の記事が皆様にとってひとつの知識になり、自分のアイデンティティを他の人とシェアしていただくことで、Japanese in Americaのコミュニティとして一緒に成長していきたいです。私達がくらしやすいアメリカを築いていくためのご協力お願いいたします。


Dr. Seussの本が6冊が、アジア人に対する人種差別的表現があることを理由に廃刊になると発表されました。
Why Dr. Seuss got away with anti-Asian racism for so long (nbcnews.com)
 

 


Fundraiser by Kristina DeLeo : Support Inglemoor HS Teacher Noriko Nasu (gofundme.com)

こちらのドネーションサイトは3月20日土曜日で締め切らせていただきます。

ドネーションサイトの発起人の1人であり、現地の高校で日本語教師をされているマイスナー・千夏子さんからのメッセージ

シアトル地域で日本語を教えて28年になりますが、こんな事件は初めてで、大変心を痛めております。同じ学区の日本語教師が被害者と言うことで、とても他人事とは思えず、兎に角何か力になりたくて、お手伝いをしています。ドネーションサイトを開いて僅か数日で$20000もの寄付があった事で、私としてもまだまだこの世の中は思いやりのある方々で溢れていると言うことを実感でき、ご協力してくださった方々に感謝の気持ちでいっぱいです。彼女の精神的なダメージに少しでもポジティブな影響を与えてくれることを願っています。皆様も、十分お気をつけて頂き、でもその上で恐れず、人間の善を信じてコミュニティを感じて生活していっていただけたらと思います。サイトは3月20日土曜日まで開けております。

【編集後記】
用があり、先日1週間ほどニューヨークに滞在していました。(飛行機出発72時間以内のコロナ陰性結果を持参し、3日間 quarantine をして4日目にコロナ検査をし、陰性であれば自由に行動ができました。4月1日からはアメリカ国内からのニューヨーク州への移動は自由になるようです。)
マンハッタンに30 年以上住んでいてアメリカ社会に溶け込み活躍している友人が「今のニューヨークは本当に危ないから気をつけて。コロナで生活が苦しくなってみんな怒っている。アジア人がその怒りのはけ口にされている」と悲しい顔でいいました。彼女は、地下鉄に乗らないようにしていました。久しぶりのマンハッタン滞在で感じたことは、「メンタルヘルスに問題のある人々が街に増えている」ということでした。正しい判断のできない人々がアウトオブコントロールな行動に出ている。そのうちのひとつがアジア人に対する攻撃になっていると思いました。

わたしの娘はハーレムでソーシャルワーカーとして働いています。サポートを必要としているさまざまな問題を抱えている貧困層のクライアントが「アジア人が憎い」と発言するのを頻繁に耳にするそうです。そのたびに「わたしもアジア人ですよ。母は日本人です。わたしたちは何も悪いことをしていません。憎まないでください」と笑顔でさらりと対応していると言ってくれました。「新しいソーシャルワーカーは親切でよくやってくれる」と娘は人気があるらしく、そんな彼女が自分たちが憎いと思っていたアジア人!というのは衝撃的で、みなとってもびっくりするそうです。しかし一瞬のびっくりのあとは、相手も何もなかったかのようにふるまうとのこと。彼らの心の中ではどんな思いがあるのでしょう。「アジア人も英語をしゃべるのか?」「アジア人もでかいのか?」・・

メンタルヘルスはアメリカが抱える大きな’問題であり、医療・福祉などの制度の改革が必要だと思います。わたしたちのできることは、正しい知識をもって、お互いを分かり合える関係を草の根で築く努力をすることだなと感じています。(文責:いじりめぐみ)


 
今日もみなさまが健やかにお過ごしできますように!
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