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Newsletter by Ximera, Inc. No.030

Case-studies-in-content-creation-and-data-use

コンテンツ制作の現場とデータ活用のケーススタディ

「データ使って云々よりもメディアとして成し遂げたいことは何かだと思う。
それを測るために何を指標をするか」

こんにちは! Magnet Newsletter No.030へようこそ。年末進行に忘年会、急な差し込み案件に年始の仕込み。考える能力の一切を使い切ろうかという日々をお過ごしのみなさま、今回のMagnet、文字が多いです(前回につづき)。ごめんなさい。


今回は先月のイベントの2本目、Impress Watchさん、NHKさん、Business Insider Japanさん、北海道新聞デジタルさんからゲストをお迎えした「コンテンツ制作の現場とデータ活用のケーススタディ(イベント詳細」の本編部分をテキストでお届けします。


また、これまではイベントの参加登録をしたみなさんにだけお伝えしていましたが、アーカイブ動画はキメラのYouTubeチャンネルでご覧いただけます。もう文字を読みたくない方は動画でご視聴ください。


テキスト、少し長いですが、登壇者のみなさまのコメントが最後の感想パートまでおもしろく、締めまで起こしました。どうぞ、ゆっくりお読みいただければ幸いです。

年末年始のお知らせ

年内は12/29(金)まで通常営業、年明けは4日(木)から営業を再開致します。

株式会社キメラ

11月29日 17:00 Zoomにて

コンテンツ制作の現場とデータ活用のケーススタディ

Impress Watch、NHK、Business Insider Japan、北海道新聞デジタル、株式会社キメラ

この原稿は口述の書き起こしです。読みやすさのために編集されています。

これはデータ活用を4段階のステップで表したもの。事前のアンケートでみなさんの組織のレベル感もこのステップのどのあたりなのか、だいたいわかってきました。


最初はデータを見続けることができずつまずく。NHKの松枝さんはウェブサイトの運営組織の立ち上げやデータ活用を横に広げてきた実績をお持ちですが、具体的にどんなことをしてデータを見る習慣をつけましたか。


松枝 一靖(NHK メディア戦略本部チーフプロデューサー):私自身は責任者になったので、自分が一番把握しなくてはならないということで見ました。忙しいなかなので、ある程度定時で見るってことを決めまして。朝起きたら見る、ごはん食べたら見る、電車乗ったら見る、仕事場着いたら見るっていう、定時の時間帯を作って見るようにしたんです、とくに午前中。そしたらいいことがあって、毎日同じタイミングで見てたら気づくんですよ。今日いいなとかダメだなとか。で、まずそこに気づいて、午前10時のデータで1日のデータが予測できるようになっていったんですよね。そうすると、仮説が生まれていって、なんで今日いいんだっけ?とか。たまに10時の予測と結果がズレたりする。なんでズレるんだっけ?とか。毎日同じ時間に見ていったら感覚が掴めていったことと、結果との仮説を考える習慣がついたのが、自分自身としてはすごくよかった点です。


これを(チームに)広げるはすごい大変なんで、これだけで2,3時間話せてしまうテーマなんですけど、NHKで一応やっているのは(オフィスに置いてある)モニターのなかにデータを映すっていうのはまずやってます。そもそもそんなにちゃんと見てくれないかもしれないが、サイネージ広告みたいなイメージです。「データあるんだね」っていうことで。やってよかったのは食いつく人がいるんですよね、少数派だけど。「あれってどうやって見たらいいんですか」とか「あれってどういう意味なんですか」「私の記事ってどういうふうに見たらいいんですか」とか。人が見える場所に(データが)あるっていうのは、広げるための一歩目としてはいい方法だったのかなと、自分の経験では思います。


以前データ共有の場を設けても、参加してくれるのは声をかけたうちの3割だという話をしていましたが、どうやって参加を促していますか。


松枝(NHK):呼びかけても集まってくれないって、みなさん悩まれると思うんですよ。私もともと社会部に10年いて、しかも直前までデスクもやってて、ほとんど知り合いなわけですよ。その状況で呼びかけても、まぁ言っても3割でした。誰がやってもそれくらいで、かつ、3割のうちのまた3分割されて、本当に自分からやりたいと思ってるのはそのうちのまた3分の1。全体の1割くらい。興味はあるんだけど、そこまでいけないよなっていうのが3分の1。とりあえずちょっと来たのが3分の1。


(人が)集まらないことにショックを受けないのが大事なことだと思ってて、そんなもんです、と。だけど、その10人に1人の熱量高い人間に出会うチャンスがそれでもやればあると思ってて。取材交渉に近いイメージを持っている。ほとんど断られるんだけど、1人たまたま「いいっすよ」と言ってくれる人がいればいいな、くらいの気持ちで途中からはやっていて。だから回数をある程度やるっていうことは心がけてました。


村堀 等(NHK 報道局 エキスパート):分析の内容によって、関心を持つ層が誰なのかを自分たちで整理していくっていうのがひとつ。この人はコアだからどうしても参加して欲しいって人は、直接「来てね」って声がけをしたり、生の働きかけっていうのはどうしても必要なのがひとつ。


それでも参加の意欲がどうしても湧かない人っていうのもいる。「そもそも何の役に立つのか」「そんなことやってる暇があるんだったら作った方がいいじゃん」と。そういう人たちにデータ見ようよと言っても見てくれないと思うんです。なので、最近やってる工夫としては「こういう示唆があったよ」とか「こういうアクションを取った方がいいんじゃないか」っていうところまで落とし込んでいって(相手が)「これどうしてわかったの?」って言ったら「データ見たんですよ」っていう、この順番がけっこう大事だと思ってます。


小さいところで言うと、部内向けのデータの振り返り会に参加したらこんなことがわかるっていうのを、コンテンツの引きみたいな感じで、タイトルを作って周知とか、けっこうあれこれやってます。画像とかは作らないですけど、たとえば最近出してるのでいうと、ストックコンテンツ、長く見られる記事ってどんなものかわかりますか? とか。そういうものが1年超えてアクセス集めつづけてる記事があるとか、引きを作って、あたかもユーザーかのように引っ張ってくるっていう工夫をしてます。


北海道新聞社の生田さんはいまデジタル推進室にいらっしゃいますが、以前は記者さんでしたよね。今の話だと「データ見てよ」って言われる側だった。道新社内ではどんな働きかけがありましたか。


生田 憲(北海道新聞社):去年7月から今の部署に来て、それまでは外勤の記者をやっていたんですけれど、私が記者だったときは記者が数字を知るツールがひとつもない状態だったんですよね。今の部署への異動が決まって内示が出たときに、Chartbeatのアカウントをもらって触りはじめました。そのときは、自分が書いたものがデータになって出てくるので、めちゃくちゃおもしろいなと。新しいおもちゃをみつけたみたいな感じで楽しんでやってました。


ただ、見方とかあんまりよくわかってないんで今の部署に来て大東さんとかそれこそ鈴木さんにああだこうだ教えてもらって。そのあとじゃあこれをどうやって広げていけばいいんだろうねっていうところで、いろいろ施策を練っていろいろありましたね。


いま(生田さんから)データを扱うのも自分で好きでやっているという話がありましたが、インプレスの臼田さんもデータを使うのが嫌なタイプの方ではないと思っていて。このあたり、インプレス社内ではデータを使うことやChartbeatの導入についてほかの記者さん編集者さんの反応いかがでしたか。


臼田 勤哉(Impress Watch 編集長):僕、今の話を聞いてけっこう衝撃を受けています。我々の会社、理工系の版元や出版社がベースになっている部分もあったので、Chartbeatを導入する前からPVを見るツールとかリアルタイムの反応みたいなものを見ていました。ある意味電話をとるより当たり前に「見てね」って言ったら見ているものだと思っていたんですね。細かい分析はしてないけどみんなが見ているものという認識で。


逆にPV見すぎてPV至上主義みたいなのがよろしくないんじゃないかみたいなところの対抗馬としてエンゲージメントをちゃんと見よう、ちゃんと読者さんが見てくれてるものはどれかっていうのはわかるって意味でChartbeatを入れたいっていうのが、6年前くらいに我々が導入した最初の動機だった。やっぱり放送局さんとか新聞社さんとかと全然違うカルチャーでやってたんだなという衝撃を受けてました。


この辺の感覚はBusiness Insiderの伊藤さんも近いんじゃないかと思っていて、ご自身はデータに関する壁はなかったというお話しを打ち合わせのときにされてましたよね。ですがBusiness Insiderでは雑誌で書いていた方、新聞で書いていた方が書く機会も多くて、そこでは壁を感じることもあったとおっしゃってました。そのあたりの最初の導入の雰囲気、おぼえていますか。


伊藤 有(Business Insider Japan 編集長):まさに松枝さんがお話されてたような話はうちの編集部でもありまして。臼田さんのインプレスさんと私が昔いたアスキーという会社は、そもそも源流は一緒なのでカルチャーはけっこう近い、IT出版なので。なので自分自身は何もハードルがない。けれど、2017年に媒体立ち上げた当初っていうのは、IT系から来たの私くらいでして、ほかの一緒に集まってきた編集部の人たちは新聞社系、通信社、それから金融系の新聞社、それからフリーランスのライターみたいな感じで、データをそこまで活用していない人たちだった。どちらかというとアナログの世界から来た人たち。だけど記事を書く腕は立つみたいな人たちだった。なので、浸透させるところを最初にやる必要があって、そこを私がけっこうやっていたところになります。


データを見る習慣をどう作るかというところはいろいろ私も工夫して、ひとつは松枝さんおっしゃっていたようなダッシュボード的なものをデジタルサイネージのように部署に表示するというのをやりました。データ分析ってリアルタイムで見ることもできるし、あとから振り返ることもできるんですけど、習慣のない人に全部をやれって絶対に無理なんですよ。なので、一番簡単で記者編集者の感覚にあったところからはじめようということで、みんなスクープだったり自分しか知らない情報を取りにいくことには感度がめちゃくちゃ高いじゃないですか。記事をよくしていこうという気持ちは元から強いので、数字の意味がわかればほっといても大丈夫だなと思った。なので、でっかいモニターにですね、当時はGoogle アナリティクスだったんですけど、リアルタイムを表示させて。そうするとすごく伸びてる記事とかが見えるようになってくるので、見えてきたら「なんで伸びてるんだろうね」って議論が自動的に起こってくる。そうなってくると「どこから来てるか、流入元見てみようか」とか、データを元にした会話をはじめる。それがカルチャーとして浸透していくっていうのを、最初の半年間くらいやっていて、そうするとみんなスマホで見るようになってきて、「リアルタイムで今来てるね」とか「昼の時間ってこのくらいの数字いくよね」とか朝見たら「今日ちょっと調子悪いかもね」とか、みんな何も言わなくてもわかっていく。というところから浸透をはじめました。


Business InsiderさんもNHKさんもBigBoardという大きいモニターに映すためのChartbeatのダッシュボードを有効活用されてますね。


データを共有する話でいうと、今の「いつでも誰でも見られる」とは別に、メンバーと同期で数字を見る時間、報告する時間を作るのが大事。道新さんは編集の方々にデータを共有する場が隔週であるんですよね。


生田(北海道新聞社):そうですね。隔週で編集局と私たちデジタル推進室の連絡会議をもっています。デジタルを担当しているデスクとか、デジタルをやれと言われてる編集委員を全員集めている。数字の振り返りとケーススタディ。これはボランティアベースではなく、業務として位置付けてもらって大事な機会にしています。最初はPVもわかんないみたいなおじさんたちが集まってきて困ったなという感じではあったんですけど、だんだん回を重ねるごとにできるようになってきた。


あと、なんで新聞社で数字が浸透しないのかを言うと、単純に業務を回すだけなら検証しなくても回るんですよ。1日単位で朝刊だ夕刊だという仕事をしていると、検証する時間も毎日持たなきゃいけないことになって、今までそういう文化もないから、やれと言われても、おもしろがれないとやれないのかなと思っていて。ただ、だんだんデジタルで仕事しましょうっていう文化自体、デジタル媒体のことも考えましょうっていう文化ができてくるなかで、自分の役割ができる人たちがいて、その人たちは自然と数字に関心をもっていくというながれだった。


(データを)どう組織に共有していくかというなかで、NHKの村堀さんが、取材をする・制作をするマインドが強い方々にデータへの興味を持ってもらうときに「文脈を使う」って話をチャット(Zoom上のリアルタイムチャット)に書いてますね。


村堀(NHK):うちは異動職場というところもあって、毎年メンバーの入れ替わりがある。ある程度浸透してきても1年でキーメンバーが抜けたりすると、PDCAが回っていたチームが一切PDCAをやらなくなる。そういう顕著な変化がある職場というのが前提にある。


回っているチームは正直言って何もする必要がない。もちろん自分たちでデータ活用できていれば、自分が見てやるっていうのが一番いいので。課題になってくるのは、データを使う意味がわからないところ(チーム)。こういうところに関しては、ツールの使い方とか「見た方がいいよ」ではなくて「ここを見たら、こうわかったよ」を提示していく。それでも動かない場合、これは最近自分たちのチームには口酸っぱく言ってるのが、提案して相手がやらなかったらそのままにするんじゃなくて、もう手を動かすところまで自分でやって「ほら効果出たでしょ」と。ここまでやり切ると、さすがにそのあとで動かないところはない。データ分析チームではあるんですけど、アクションにまで責任をもつ。そこのマインドが重要なのかなとは思います。


とはいえ、そこの壁を壊せない方もまだいらっしゃる。記者さんや編集者さんに「データを見てもらえないんだよ」という方、いらっしゃると思うんです。記者さん編集者さんのなかでも、データを取り入れてもらいやすい方もいれば、なかなか難しい方もいる。無理に「データを使え」という話ではないと思いますし。そういうところの押し引きというか、バランス感、道新の生田さんはどんなふうにしていますか。


生田(北海道新聞社):ダッシュボードとかって本人が来てくれないと見てもらえないプル型。プッシュも要ると思うんですよね。一番最初にやったのがChartbeatのレポート機能、前日のトラフィックをメールで出せるツールを、記者全員に毎朝送りつけるっていうすごい迷惑な施策を……(苦笑)。僕の個人アドレスから送るっていうね、すごい嫌われ者みたいな感じですけど、午前4時半頃届くみたいなの(苦笑)。それをずっと一年半くらいやりつづけてて、それにPVとはなんですかとか、エンゲージメントタイムとはなんですかとか、毎日同じ定型文なんですけど書いてるんですよ。そうやってやってるとさすがにエンゲージメントって何ですかって言われることはなくなったのかなと思います。それがプッシュですね。


あとは松枝さんのお話にもあったんですけど、感度のいい人もいて、めちゃくちゃデータ見るのが大好きだとか、そもそもデジタルコンテンツ作るのが大好きだっていう人も1年くらいすると出てきてですね。この前、ある若い女性記者がですね、私はデジタルを作るのが大好きだって言って社内ウェビナーをやってくれたんですよ。デジタルの書き方講座みたいな。あんまり集客はできなかったんだけど、すごく大きな変化だと思うんですよね私のなかでは。私自身は記者出身ですけどもデジタルさんみたいになっちゃって、いかにも推進してる人みたいな感じ。でも、ずっと言いつづけてると反応してくれる人もいて、そういう人たちをちゃんと盛り上げて、編集局のなかで機運が盛り上がるような環境を作っていくのがこれからの課題かなと思っています。


共有するとなると、強烈なリーダーシップでやりつづける方々と仲間になる方をどうみつけるかが鍵ですね。あとはデータの見せ方・出し方。NHKの村堀さんのように興味をもってもらえるように工夫して出すとか、道新の生田さんのようにメール送りつけるとか(笑)。Business InsiderさんやNHKさんのようにダッシュボードとかそのへんになるのかなと。


伊藤(Business Insider Japan):あともうひとつ、今日は組織の長の人たちが参加者のみなさん多いと思うので、使い方のひとつとしてあるのは、適切に同僚を褒めるためのツールとして使うこと。モチベーションを作るために大事。(モチベーションは)PVに引っ張られやすいが、瑣末なPVとそうではないPVがあり、それはデータを見ないとわからない。すごくヒットしている記事に見えるが、どこからこの人たちが来ていて、どうしてこの数字が生まれたのかを分析すると「すごく読まれたけど瑣末だね」ということがある。あるいは単純な数値だけで比較するとすごくヒットした記事の1/10くらいしか読まれてないが、この経路で読まれてる記事っていうのは実はすごい、X経由の流入が異常に多い、なんだこれは、ものすごい反響があったんじゃないか。というのは、PVを見ているだけではわからない。肩を落としている記者がいたとしても「これはすごい数字もってるし、我々が通常取れていないところで読まれているので、これは続報を打った方がいい」と言えたりする。数字を「めんどくさいもの」ではなくて、自分をモチベートしてくれるものと数字の見方の定義を変えていったほうがカルチャーとして、とくに上司が使う数字としてはいいんじゃないかと思っている。


臼田(Impress Watch):いいPV・悪いPVって本当はないはずだが、やっぱりドカンと来ている見え方や、ありがたいがDiscoverは我々の努力じゃないよねという部分はある。とくにコストや時間をかけて作った記事がPV上ではそこまででもないと見えてしまうときはやっぱりあって、それに対して見出しを変えたり施策は打てるが、いいものやそこそこがんばったものには「しっかり読まれている」という傾向は出る。それでも失敗はあるが、じゃあどこが悪かったのか施策は打てる。たとえば見出しを変えてみてちょっと伸びたねとか、そういうことができるのがChartbeatを導入していての良さだ。


あとは、バズりすぎ、悪バズりみたいなものに対して、それ何回もくりかえすなよっていうのもあったりする。そこも含めて「この媒体なにやりたいんだっけ?」みたいな話も、ダッシュボード見たりChartbeatを見たりするなかで生まれてくることなのかなと。改めて、データを見ながら「僕ら何やりたいんだっけ」「この記事何を伝えたいんだっけ」みたいな話っていうのを、我々会議のなかでよくやってるので、伊藤さんと同じような趣旨で賛同、頷きポイントが多かったです。


事前の打ち合わせではダメだった記事を会議のときに挙げるとおっしゃってました。


臼田(Impress Watch):Impress Watchという媒体自体はノンジャンルで薄くデジタル被ってるとか、ビジネスパーソンの多くに関わるものだったら何でもやっていこうみたいな感じで「なんか、これ流行ってるよね?」みたいなことも一応ニュースリリースベースで軽くやって、これが受けたら企画作っていこうか、みたいなスタンスでやっている。新聞で、テレビで、YouTubeで、TikTokで盛り上がっているものでもやってみる。すると9割方、外れる。そのなかでもソーシャルでバズるとか、やたらとこれだけは読まれたというような手応えを見たいので、PVが高いものと低いものを両方見ていきたいと話している。閾値を超えないものに対しては基本的にはやらない方向だが、ただなんでスベったかという話を編集部でする。「これはまだ来てないね」とか、あるいはTVでは、ほかの媒体ではバズってるのになんでうちはスベッたのか。これ見出しじゃない?とか、そういう話になったりする。メインビジュアルがしょぼいよとか。リアルで写真撮ってこないと話にならない。完全に後追いでとりあえずの抑えでやったからダメだよねとか。社内で情報共有というか、自分たちが何をやりたくてこれをやって、結果ダメだったという反省会をカジュアルにやりやすい。なのでスベッた記事っていうのは僕はけっこう好きで、あんま量産しちゃダメなんですけども(笑)


「うちのメディアの文脈では、このヒットよりこっちのヒットのほうが今は価値のある、褒めたいものなんだよ」というように(データを)使うのは、メディアの方向性としての評価を(その記事に)することだ。「うちはAではなくBの道に行きたいんだよ」ということを、編集部員のなかで話せる機会だ。


臼田(Impress Watch):まさにそうです。


NHKの松枝さんも、自分たちのなかで「これがいいものである」という認識を合わせるのがすごく大変だと話されていた。この擦り合わせができるのがデータの魅力。試されていることなどありますか。


松枝(NHK):ひとつは、1日、1週間、1ヶ月という活かし方。1日は朝回で。ラフに、昨日見られたPVの上位3つとエンゲージメント上位3つを並べている。NHKはヤフーさんとかに出せないのでそんなPVいかないんですよ。でもNHKのブランド価値って信頼感なので「記事を読んでよかった、役立ったな」ってことが大事なんですよってことでエンゲージメントを並べてて。最初は意味がわからないんですけど、毎日エンゲージメント1,2,3ってわーって褒めてると「なんですか?」ってところから「そういうものも評価なんですね」とけっこう浸透していった。週でいうと、もう少し深堀っている。村堀がさっき言ったように「こういう対策をしたら、こうなった」とやるのが週。月になると「今月はこのテーマに着目してみました」と深堀っていって伝えている。フェーズを変えながらやっているのが1点。


あと、データっていうとすごい大袈裟な感じも受けるんですけど、そんなでもなくて。すごいこね回す必要とかもまったくなくて、記事のアクセスも素直に見ればいいかなと。もっとほんと単純なことで、褒めるから入ったと話したが「ちょっとこれ直そう」みたいな話をどうやって伝えるかなと思ってはじめたのがこれだ。

すべての記事のサムネイルとタイトルを、大学生3人に見せて、5段階評価してもらった

すべての記事のサムネイルとタイトルを、大学生3人に見せて、5段階評価してもらった。周りに言われたら反論できないと思った。僕や後輩が言うと角がたつが、たとえば若い人たちに見てほしいという話になったとき、大学生とかに言われたらさすがに変わるかもなと、これを半年くらいやった。特集記事は本当に全記事やって5段階評価してもらった。


ただ伝え方はちょっと考えて、褒めるやつはいいんですが、ダメな例集は自分の近く、「これ悪いやつやらせてもらうわ」と言える感じの(信頼関係のある)ところから選んでいった。そうすると、いいやつ集だと「なるほどやっぱり、顔が強いのね」とか「サムネにごちゃごちゃ書いたらダメだよね」みたいな感じが「いや大学生から言われちゃったよ」みたいな感じも含めて、伝わりやすかったりする。伝え方の一工夫もちょこちょこやりながらやっている。


見出しはそのメディアの性格が出る。見出しのABテストはどんなふうにやっていますか。インプレスの臼田さんはご自身でけっこうやるとか。


臼田(Impress Watch):私の場合はもう5,6年くらいChartbeatを使っていて、だいたいこれくらいの長さがいいとか、こういうキーワードが強いというのはわかっている。たとえば、Amazonだったら英語表記かカナ表記か。昔は海外のAmazonの発表だったら「米Amazon」表記だったが、何回やってもカタカナの「アマゾン」に勝てない。ただ米国発表だとわかるような要素はタイトルに残そうとか。そういうことをテストしながら週次の会議で(話している)。見出しのABテストは新聞社さんだとあまりできないという話を聞いたが、我々はすごく重視している。編集部のなかでも記事の校正をして「この見出し、どうなんだろう」という話はよく出る。「〇〇部長」みたいな見出しがあって「〇〇部長(なんて読者は)知らねえよ」みたいな話とか。「それよりは、この人が伝えたかったのはこうでしょ。括弧でこのコメント抜いたほうがいいでしょ」「でも俺そうは思わないよ」みたいな話になると「じゃあテストしてみよう」とか、そういうことになる。まずこう言い合える、出し合える関係性を作ることも重要だが、結果を出せるということが重要だ。


「データが答えをくれる」とか「データを使えば解決する」というものでは全然なくて、データは話をするための素材でしかない。話のなかのほうが実りがたくさんある。さきほどのメディアの方向性の話も、上司としての褒めるツールとしての側面にしてもそうだ。そういうコミュニケーションの力は確実にある。


Business InsiderはABテストどんなふうにしていますか。


伊藤(Business Insider Japan):Business Insiderは非常に報道色の強いメディアでもありつつ発祥がそもそもニューヨークの媒体なので、経済報道の考え方はアメリカの編集部がやってることを取り入れて考えている。タイトルAB問題はすごく難しくて、新聞社さんによっては一度決めたタイトルを変えるのはまかりならんというところがあるのは知ってますし、私も出版社出身なのでそういう感覚は昔はあったんですけれども、オンラインメディアになってどの伝え方がいいのか(考えるようになった)。さきほどのAmazonの話はまさにそうだと思うが、それまでは編集長だったり上席の人間の感覚値・経験値から決めていたことが、実はそうではないかもしれないことがわかる。これが分析をする良さだ。


ということを前提にしながら、Business Insider(Japan)が立ち上がったときにUSとコミュニケーション取りながらけっこうびっくりしたのが、明確な誤報は当たり前にダメなんですけど、タイトルを変えていくこととか、あるいは原稿の中身をよい方向に変えていくことにはまったくハードルがない。非常に合理的。とくにタイトルについては、間違いは間違いでもし誤報を出してしまった場合は最悪は削除になりますけど、タイトルをどういうふうな書き方にするのが読者に伝わるのか、一番本質的に伝えたかったことはどの書き方が伝わるのかというのは、一回ではわからないと思っている。そういう意味でタイトルABはとても大事だ。やるべきかどうかの議論はまだあるが、よい使い方をするなら絶対にやったほうがいいと思っている。


(タイトルだけでなく)中身についても、原稿を変えるのは日本ではあまりやっていないが、USはけっこうやっている。前後を入れ替えたりもしているし、離脱のポイントがわかったらそこから下を書き換えたりもする。かなりドラスティックだ。最適化をどんどんやっている。合理的にオンラインメディアをするとはこういうことだなと思う。


日本でもたとえば、記事のなかに画像をどれくらい入れたらいいかを議論するが、一般的にオンラインのコンテンツをやっている人たちは「画像をとにかくたくさん入れたほうがいいですよ」と。1スクロール内に1枚以上あったほうがいい。スマホの画面で言うと、1.1枚とか1.2枚みたいな。媒体の特性にもよるが、我々の媒体のようなところだと必ずしもそうとは言えないことがわかってきた。とある画像のポイントで離脱していることがわかったときに、思い切って画像を消すともっと下までちゃんと読んでくれることがわかったりする。これはいわゆる原稿の改変には当たらない。画像を出すか無くすかの話であると考え、こういう調整を入れたりはしている。それによって離脱が減って最後まで読んでもらえるということは、意図した文意の全体が伝わるということなので、そのほうがよいだろうと考えている。


新聞社さんの考えも伺ってみましょう。道新さんの場合どうでしょう。出したあとの記事の見出しや中身をベターにしていくために変更をする作業、これに関するカルチャーどうでしょうか。


生田(北海道新聞社):見出しを変えるはある。やっている。ただ、業務負荷的にやり切れてないという感じだ。いまインプレスさん、Business Insiderさんのお話聞いて思ったのは、変えたときのことがナレッジとして編集局のなかに溜まっていっていないだろうなと反省していた。


中身を変えるのはちょっと難しい。軽微な変更はあるが、どうしても前のフローまで遡って確認してもらわないと新聞社のカルチャー的には難しい。ちょっとできない。


が、そこまでやり切らないと、働き方も変えないといけないと思いますけど。


キメラは支援のなかで、自分のメディアでの強い見出しのパターンを作るといいですよと言っている。各々のメディアによって効く見出しに特性があるからだ。


大東さん、見出しの数字の傾向を分けているのは何なんでしょう。


大東(株式会社キメラ代表取締役社長):見出しが何のためにあるかがすごく重要だ。「CTRが上がるから見出しを変えたほうがいい」ということと「CTRが上がって、さらにエンゲージメントが上がってちゃんと読んでもらえるようになる」ことをしっかり見ることは、全然違うことだ。


NHKさんと「タイトルを見た瞬間に期待値の設定ができてないとダメですよね」という話をしていた。そのタイトルが期待値を設定できているかをどう評価するか(の話になる)。この根本的な考え方が整っているかがそもそもだと思う。


コンテンツの中身がいいことと(同時に)、デリバリーがいいことが重要だ。中身がどんなに良くても、届けたい人にちゃんと届いていなかったら全然意味がない。武器としてタイトルを操れているかどうか。


某新聞社さんだと、LINEのニュースでタイトルをすごく短くして出していた。期待値の設定をうまくやっているし、一般的なWebメディアのコンテンツで考えるような「タイトルでどう導くか」を極端に短いなかでもやるところがおもしろかった。こういうこともありだと思った。デリバリーの道具としてタイトルをどう使うか。それをどう数字で評価するか。


コンテンツの中身とデリバリーを分けて考えることと、メディアのあり方と掛け合わせてどう使うかは学びがありますね。次は、データをどこでどう使うのか。データを判断基準のひとつにはするが、数値が高いからといってすべてのコンテンツをそう変えるのかどうかという話も同時にある。このあたりはデータを「共有する」ところからもうひとつ上の「文化にする」話だ。


道新さんはデジタル推進室のほかに編集部門のデジタルエディターという方々がいらっしゃる。彼らをどう育てているのか。どう取り組んでいるのかお話いただけますか。


生田(北海道新聞社):まず私がいるデジタル推進室が何なのか。社内のほぼすべての局、編集、制作、販売、エンジニア、広告営業などから集めてきて、20人くらいの社内横断組織を編成している。課金・サブスクリプションに関わらずデジタルに関わる事業を統括する。このなかで私は編集出身なので編集との窓口役をやっている。私のカウンターパートになるのがデジタル編集長だ。さきほどの見出しの話や出稿部から集まってくるコンテンツの捌き、バリュー判断などすべてその人が握っている。すごくコミュニケーションの形として組織としてわかりやすい。


私も忙しいのでなかなかいろいろな出稿部を回っていられない。デジタル編集長のところへ行って「いまどういうことに困ってますか」とか「今日の数字こうでしたね」と会えば数字の話をするみたいなことをしている。そうすると「こういうことしてほしい」とか「この記事なんで読まれなかったんだろうね」「これもっとプッシュしたいんだけど」と話してくれる。それを私が持って帰ってきて喋っていると、周りで聞き耳を立てている同僚が「これWeb広告回しましょうよ」と言ったりする。みたいなことは日常茶飯的にやっている。


デジタル推進室のなかでも日次でKPIミーティングをやっている。それぞれの担当者がWeb指標に関わらずいろんな報告をする。いろんな数字がどうしてこうなったのかを担当者が説明してくれたり、担当者がわからなかったらみんなで考えたりということをやっている。


大東(キメラ代表):定性を捉えるために定量を使っている。数字を見るためにデータを見ているのではなく、その先の行動を常にイメージして話す人が多い気がする。絶対的に数字がどうかというより、そこから何が想像できるか。妄想タイムを毎朝やってるんですもんね?


生田(北海道新聞社):そうですね。妄想タイムはちょっとひどい言い方ですけど(笑)。10分とかでもみんなでひとつの物事を考える時間は大事だし、数字を前提に話すといい。


定性を定量で測るというのは、NHKさんもかなりトレーニングしてこられた。定性のテーマやトピックをどう出すのか。どう束ねて数字の話に落とし込んでいるのか。


松枝(NHK):エンゲージメントを大事にすると言っても、エンゲージメントという言葉もなるべく使わないようにしている。要するに、クロ現とかNスペとか観たあとの読後感と同じようなものをネットでやりたいよねと。そうするにはこういう数字が上がると似たことなんだよ、みたいな感じで説明するようにしている。


成したいもの。これも大東さんから最初の頃に散々言われて。「どこに行きたいんですかNHKさん」って。そういうことをずっと毎月言われてて、みんなが見える・わかる話で例えて言って、「この指標でいうとこう」みたいなふうにもってくと、割とイメージがつきやすいというのはある。


村堀(NHK):やっていくなかで「村堀くん、これ分析してどうにかしてよ」ということが非常に多い。そういうときに私も必ず「そもそもこの枠で、このコンテンツで何をしたいんですか」ということを必ず聞いている。そこから組み立てて考えていって「じゃこういう指標があって、ここを目標にするのはどうですか?」と、指標をまず相手に合意してもらわないとなかなか次に繋がってこない。


うちはとくにチームがたくさんいてそれぞれの文化や想いがあったりするので、それを大事にしながらデータを練り込んでいく進め方がいいと考えている。


(Q&Aへ:ここは動画でご覧ください


最後に、登壇者のみなさんから今日の感想を一言ずついただけますか。


伊藤 有(Business Insider Japan 編集長):今日ご参加されているみなさんからもむしろいろいろ聞きたかった。メディアによって課題感が違いすぎる。それを話したほうがいい。私はBusiness Insiderの編集長もやりつつインターネットメディア協会の理事もやっているが、メディア横断でいまの課題の向き合いをやると解決するものがあったり、あるいは実は同じ問題を抱えていたりする。これからの時代の伝え方や生き残りを考えるとそういうコミュニケーション取ったほうがいい。今日かなりいい機会になったんじゃないかなと、かなり楽しみながら聞いていた。


うちも有料課金をやっているので、さきほどのコンバージョンのところの話(Q&Aで取り扱った話題)はかなり思うところがある。コンテンツのコンバージョンを、コンテンツの改善によって追求するというのはひょっとしたら難しいかもしれない。稼げるというと言い方よくないですけれども、課金をしても読みたいジャンルの記事とかカテゴリーの記事、コンバージョンには繋がらないけれども媒体価値を保ったり、社会に必要とされている情報だから出すっていうのを分けて考えたほうがいいかもしれない。うちの課金コンテンツでも数字稼ぐジャンルとかというのもある程度見えてきているが、それを全体に広げようとするというのも非常に難しい。むしろ稼げないかもしれないジャンルにがんばっててもしょうがないじゃないかという感覚で見ている。


松枝 一靖(NHK メディア戦略本部チーフプロデューサー):みなさまの話を聞いて、違いと共に共通項もあってすごくおもしろかった。今日は新聞社の方が多いのでふたつだけお伝えする。


一番最初に言ったように、とにかく量を見るのがすごく大事だ。ピッチャーでいう投げ込み、バッターでいう素振りみたいなところがある。やっていると感覚は掴めてくる。アナリストに頼みたいとかそういうオーダーをされる方もいるが、全然そういう高いレベルのことは必要ない。作り手が自分たちの感想や感覚を持ちながら数字を見るのが大事な作業だ。Chartbeatでもどんなツールでもいいが、定時に毎日見ることをひとつお勧めする。


ニュース系をずっとやっていて思うのは、改善の費用対効果が一番いいのはタイトルとサムネイルだ。そこを全力でまずがんばってみるというのが費用対効果としては抜群にいいし、他社さんも含めて参考にするものがいっぱいある。そこからやるのをお勧めする。なぜなら、そこで結果が出るとみんながついてきてくれるからです。


質問が来ています。「デジタルに関心を持たせる飴については勉強になりました。一方、鞭にあたる人事考課についてはみなさまの会社で設定なさっていますでしょうか。答えずらい質問かもしれませんが」


伊藤(Business Insider Japan):おそらくどれだけPVやコンバージョンが取れたかを評価制度に入れるのかどうかの話だと思いますが、うちの媒体の場合、そういうふうな直接的に結びつくのは入れていない。とくに報道系のメディアの方だとけっこうやりづらいと思う。なぜなら、その記者の持っているジャンルによって、非常に数字が稼げるジャンルとそうでないジャンルの人がいて、それはその人の技量の良し悪しではない。うちの場合だと、その記者のポテンシャルとして「あなたの期待値はこれくらいですよ」というふうにそこを追求してもらうほうがいいんじゃないかな、と。全体に同じ数字で線を引いて、段階を設けて評価するというふうにしないほうがおそらく綺麗に回るんじゃないか。


ありがとうございます。一例の答えとして参考にしていただければ。


感想戦のつづきを。


臼田 勤哉(Impress Watch 編集長):データというか、読者の反応を見てもらうのにこんなに苦労しているというのがすごく衝撃で。最近、新卒の面接をやっていて「いまの仕事なにがいいんですか?」と訊かれると「日々の反応がわかるのが楽しいんですよ」と話している。つまり、いま何が流行っていて、こういうものをやったら受けるんだ、こういうことがいま来てるんだ、こういう人がいまいて活躍されてるんだ、そういうことの反応がユーザーの反応でダイレクトにわかる。


そこを見るのがメディアの仕事に、我々の会社に、そういうカルチャーがあったんだなと。自分は楽しいと思っていたが、あまり気づいていなかった。新聞社さんやNHKさんのような分業化された専門家チームとは同じメディアでも全然違うんだということに気づいたというのは、僕のなかではおもしろかった。


あと本当に、みんながデータを見ているもの。PVなんか当たり前に見ているものだと思っていて、自分のチームは間違いなくそうだが。ただそれが会社、インプレスのWatchシリーズ15媒体くらいあって「本当に見てるのか」とちょっと不安になってます(一同笑)。そこは「みんなやってる?」って話を改めてやってきたいなと思ってます。


あと今日、「データを見てもらう」って話、実は僕あんまりピンと来てなかったんですね。打ち合わせのときも「別に、Chartbeat見てるだけですよ。大したことやってないですよ」みたいな。まさにそこに読者がいてどういう反応してるのかっていうのを見たいだけなんですよね。あくまで編集記者としていま何が流行っていて、自分がやったものに対して少なくとも見てる人はこう反応してるんだというのをオープンにしていくことは、やったほうがいいことだなと改めて思った。ここがうまくいくといいコンテンツが世の中に出ていくのかなと思ってました。


村堀 等(NHK 報道局 エキスパート):みなさんのお話どれも参考にさせていただきました。データ分析とかデータ活用ってその文脈で語られることが多い気がするが、個人的にはどちらかというとマネジメントの話だと思っている。とくに、うちなんかはそんな組織文化なんだ、意外だという話がたくさんあったが、まさにマネジメントによる組織変革であって、むしろマネジメントができている会社であればデータ分析っていうのは自然とできるものなんじゃないかと、改めて思った。


マネジメントには人に動いてもらう側面がある。それぞれの相手はひとりひとり個性のある人間だ。そことの向き合い方をシェアしていくと、自分のところで似たような状況が起きたときにどう対応したらいいのか、そこに展開してもっていける。今日参加させていただいていてありがたかった。


生田 憲(北海道新聞社):みなさんありがとうございました。全然立ち位置の違うみなさんとご一緒させていただいて、うちの会社でまだやらなきゃいけないことがたくさんあるなぁと改めて思った。


最後、編集権の話を忘れていた。編集局にコンテンツのデリバリー、届け方の話というのはするが、コンテンツそのものの中身の話は一切しないようにしている。そこに壁を作ってもっていないといろいろ破綻する。


Q&Aの)最後の質問で「読ませたい記事と読まれる記事が違う」という話があったが、あれはまったく課題じゃない。読ませたい記事があるのは報道やってんだから当たり前にあるし、それは持っててもらわなきゃ困る。一方で、読まれる記事に編集局が関心を持っていないかというとそんなことはまったくない。我々がずっと培ってきたニュースバリューと全然違うものが急に読まれたりすると、それはすごくおもしろいことだ。さきほど臼田さんがいろいろ試してみるって話をされてましたが、そういうものを「こんな報道もできる」「こんなニュースも作れる」と提案していくかたちでサイトを盛り上げていくといいんじゃないか。価値観を壊すんじゃなくて、データで民主化するというのがいい。


大東(キメラ代表):今日はお忙しいなか、みなさんありがとうございました。各社考え方は違うが、データ使って云々よりもメディアとして成し遂げたいことは何かだと思う。それを測るために何を指標をするか。「他所がこうやってるからこう」っていうのは参考にはなるが、当てはまらないケースのほうが多い。そもそもデータを使う前にメディアとして成し遂げたいことは何かというのを徹底的に突き詰めてもらえたらいいんじゃないかと思います。

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急に寒くなりました。空も重たい色になっていると押しつぶされそうですが、意識して温かいものを食べ、太陽を浴び、体調に、自分に気を使いましょう。忘年会とは言わずとも、人とお喋りするのもいい気分転換になるはずです。


ではまた次回。お元気で。

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