1つ目の事例は、ユーザ同士で宿泊施設を融通しあうネットワークを提供するKindredです。Kindredは一見するとAirbnbのようC2Cで部屋の貸し借りをするシェアリングエコノミーのプラットフォームのようですが、Airbnbとは大きく異なる点があります。Kindredでは、ホストとゲストが売買関係を作るのではなく、物々交換のように双方でお互いの部屋を融通しあうのです。
Airbnbではホストが不特定多数のゲスト候補者に部屋と料金を公開して、見知らぬ人がそこに宿泊予約を入れることになります。見知らぬ宿泊客と宿泊施設の提供者が宿泊サービスの提供と引き換えに、金銭の授受を行う「バケーションレンタルビジネス」です。また多くの施設は投資物件として運用されており、宿泊料はときに需要と供給の調整を受け、大きく高騰することもあり、不当に高いと感じることも少なくありません。
そこでKindredが取ったアプローチが、メンバー限定でホストとゲストの寛大さで信頼されたコミュニティの中でネットワークを作り、物件を融通する仕組みです。Kindredはこれを「バケーションレンタル」ではなく、「ホームスワッピング」と呼んでいます。これは通常旅行をする際に発生するキャッシュフローを抑制するためのアプローチです。つまり、ユーザが自身の物件を宿泊施設として提供することで、宿泊料金を払わずに別の施設に滞在することができます。またユーザ同士もビジネス関係というよりは、お互いに違う場所に短期滞在したいという需要と供給をマッチさせるコミュニティになっていることも特徴です。
Kidnredでホームスワッピングで宿泊を利用するためには、まず最初に自分が招待されるかウェイトリストで登録されるのを待つ必要があります。自身の物件を登録し、Kindred側から承認されるとはじめてメンバー限定のネットワークに参加することができるようになります。メンバー限定のネットワークに入った後は、自分が獲得したクレジット(宿泊施設を提供するごとに獲得される)を使うか、誰かをホストする代わりに別のユーザの宿泊施設へゲストとして宿泊することができます。このとき、クリーニング代とKindredに支払う手数料(最大で一泊あたり25ドル)は支払う必要がありますが、一番高価となる宿泊料は支払う必要がありません。
現状Kindredのコアユースケースとしては、頻繁に働く場所を意図的に変えているリモートワーカーがお互いに居住住宅を交換しあうことで、旅行を楽しみながら働く需要を満たしています。
2022年にプライベートベータを開始してから、2万人の会員申込みがあり、5,000泊以上の宿泊回数を生み出し、成果が出始めています。Kindredは2023年4月にNew Enterprise AssociateやAndreessen Horowitz、Bessemer Venture Partnersといった著名ベンチャーキャピタルから1500万ドル(約20億円)のシリーズAラウンドで資金調達し、さらなる提供地域の拡大が見込まれます。